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    kagemairi

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    kagemairi

    MEMO3の真島建設アジトが使えるようになったあたりで逢引してる桐真受話器を取る。
    3つの数字を続けて回す。
    数度の呼び出し音のあと、通話状態になったことが沈黙で伝わる。
    受話器を手に持ったままそれを確認し、フックへと戻す。

    携帯の番号はお互い知っているのだし、直接連絡すれば済むことだ。
    今ついたとも、何時にとも伝えることはないし、実際ひとりで休息をとってそのまま出ていく事もある。
    その「逢う」という目的に限って言えば無駄でしかない手順を律儀に踏んでいるのは、つまるところ儀式なんだろうと思う。
    この空間へ踏み込み、自分を慣れ親しんだなにかから切り離すための。
    さほど重くも厚くもない扉で区切られた8畳ほどのこの空間に閉じ込めるための。

    夜半過ぎに現れた男は、ほんま予報なんちゅうのはデタラメやで、と身体についた水滴をはらいながらひとりごちた。
    簡素なマットでまどろんでいた半覚醒の重い目を蛍光灯の無遠慮な光がこじあけようとする。
    なにか言おうとしたが特に思いつかず、呻きとも相槌ともつかない声を出して見上げる。
    強いコントラストで彼の顔の造形が強調され、生気を奪う青白い光がさらに作り物めいた質感を与えている。
    深い眼窩もまた影に覆われていたが、反射して揺れ 1614