アオイの一人語り (アオイ→クレナイ)青鬼「私」の大切な友人赤鬼「クレナイ」
楽しそうに満面の笑みを浮かべて笑い私の名前を呼ぶお前の笑顔が元気な声が私は好きだ。
お前の表情はくるくると変わり見ていて飽きない。
私が知るどんな鬼達よりも心優しく少々泣き虫だな。
私はお前に泣かれると少し困ってしまう。
「人間と仲良くなりたい」そう泣きついてきた幼く世界の理不尽を知らない私の大切な友人。
成長するにつれてお前の願いは夢に変わって正義と優しさで赤鬼であるお前は人間達に寄り添おうと努力を続けた。
けれど、私達鬼は人間にとって脅威であり受け入れてもらえるはずもない。
私と二人このまま楽しく暮らしていればいい。
「今日は人と少し言葉を交わせた」「今日助けた人に命乞いをされた」「今日は石を投げつけられた」「今日は子供達に混ざり遊んだ」
悲しそうに、嬉しそうにお前が私に人間達との出来事を話してくれる。
私の大切なクレナイ。
私は知っている。
ここは誰かが作った「泣いた赤鬼」の物語。
私は・・・。
私。青鬼は大切な友人赤鬼との対立を演じ人の輪の中へ導くために作られた登場人物。
愛おしいクレナイ。
私はお前が泣くのを見たくない。
お前がが笑って暮らせるように人の中へ送り出そう。
赤鬼が青鬼の事を思って後悔し泣いて暮らすと知っているのに私はお前を置いて姿を消さなければならない。
それが物語に決められたあり方だ。
せめて・・・。
お前が自分を責めることが無いよう私はお前を裏切り姿を消そう。
友人を自身の夢のために失い自身を責め青鬼を思い泣くお前を私は見たくない。
あざむいて裏切って私は私が望むお前の幸せを願いお前が大切にする人間達の村を襲う。
世界が私からお前を奪って行く・・・。
そうして災厄から皆を必死に守った赤鬼の前から青鬼は永遠に姿を消す。
私が愛するクレナイは強い。
何度も繰り返すこの物語の終わりでお前は青鬼を思い泣いて泣いて悔やむのだろう。
私の裏切りもお前は泣いてしまうのだろう・・・。
けれどお前は優しく強い私の自慢の友人だ。
人間を守りお前と私の夢になった「クレナイの幸せ」を叶え人の輪の中で私の好きな笑顔で暮らせる。
一人の企みから始まった世界の崩壊は多くの者達の「願い」「野望」「夢」「望み」様々な思いを集め世界を浸食していく。
物語を終えた者達が集まるこの世界でクレナイは私を探す。
今度は自分の力で人に受け入れてもらうために私がお前のために作り上げた剣を握り悪事に立ち向かい笑って時に「泣いて」向けられる悪意にも疑いにも耐え物語の中で受けた「理不尽」よりももっと多くの苦難を乗り越え喜び強くなっていく。
私が側に居なくてもクレナイは楽しそうに私の大好きな笑顔で暮らせている。
お前が幸せならそれでいい。
それでも時々考えてしまう。
お前の側に行きたいと。
お前が私を探す様に私もお前の事を常に気にかけている。
それでも私はお前の側に行くことは出来ない。
物語に強制された運命に私達登場人物は逆らう事は出来なかった。
その秩序が崩壊した今の世界でも私達は物語に囚われたままだ。
赤鬼が人々と仲良く暮らす為には悪い青鬼が側にいてはならない。
私たちはそう作られた赤鬼と青鬼。
赤鬼が泣き暮らす姿を見ていられれず何よりも大切な友人が幸せに笑って暮らす事を信じ青鬼自身が一番大切で失いたくない温もりも優しさも与えられる幸せの全てを自ら手放し赤鬼騙し裏切り姿を消す物語。
すべては物語の望むまま。
青鬼「アオイ」は赤鬼。「クレナイ」を世界の何よりも大切思い愛してる。
私は世界を崩壊させてでもクレナイのために酷く残酷行いをする。
世界を裏切り世界を恐怖に陥れる。
元気に笑い私に温もりをくれるクレナイが人間達の中で幸せに笑って暮らす世界を続けるために。
繰り返す物語でクレナイは何時だって最後は青鬼の行いに苦しみ泣いている。
あの物語にはクレナイの幸せは無い。
あるのは夢を語り。自己満足のために共に暮らす喜びを断ち姿消した友人を思い自身を責め泣き暮らす哀れで愚かな鬼が二人。
・・・
だから。
私は物語の世界を壊す。
赤鬼クレナイが幸に暮らす世界を作るために私青鬼が世界を崩壊させる。
そのために私はクレナイの大切な人達を。街を。世界を傷つける。
人々に世界のを敵にする悪鬼の消えない恐怖を刻み込む。
正義のため心優しいクレナイと戦う私は世界の敵だ。
それが青鬼の私が赤鬼の幸せを守る手段。
大会の参加資格を得た私が願うのはクレナイの幸せ。
クレナイが何度も繰り返し泣いて暮らす物語にもう私の大切なクレナイを渡さない。
私達物語の住人は永遠に終わらない物語の世界の流れを終わらせ願うままに生きる。
私が願う大切な友人クレナイが自身の意思と選択で苦難を乗り越え笑い幸せに生きる世界。