十四座の間のファダニエルは、山積みのクリスタルと資料のあいだに、その長身を埋めていた。もう何時間──ひょっとしたら何日間も、ほとんど休むことなく、ずっと頭と手を動かし続けている。
彼とその仲間たちに課された使命は『星全体を厚いエーテルで覆う機構を創り出すこと』であった。
ああでもない。こうでもない。時間はない。
それでも、仕組みはあらかた整った。
人々の〝星を救いたい〟という祈りを源として、この星を護る存在を具現化させる。必要な能力も、それに見合った姿も、それを組み立てるための術式も──ただし、材料だけが足りない。星全体を護る存在を創るに必要な、天文学的な量のエーテル。如何に計算を重ねようとも、それだけが、どうにもならないのだ。
エメトセルクらの力を以て冥界に蓄積したエーテルを用いることも検討したが、余りにも膨大な量のエーテル消費は、却って星へのダメージが深刻になると結論付けられた。それでは本末転倒だ。
ファダニエルは、本気だった。
この恐ろしい事態を目の前にして、星と人々を救いたいと心の底から本気で願っている。
「人は生き残るに値する存在なのか」
かつて心中に抱いたこともあったそんな問いは、迫り来る星の危機を前にして、とうに忘れ去っていた。
今、全ての命が無慈悲にも奪われようとしている。
ファダニエルにはその事が、痛くて、悲しくて、仕方がない。
人も、管理生物も、野生生物も、全ては〝等しく〟この星に在る、尊い命だ。そう──全ては等しく、星より生まれ、星へ還る、美しいエネルギーである。
──そんなふうに、心から思っていた彼だからこそ、この解を導き出せたのだろう。常人の域を越えた思考は、時に十四人委員の他のメンバーでさえも置いていきながら、次々と飛んで行く。そして後に人々は言う。『当代のファダニエルなくして、我々がこの星を救う道を得ることはなかった!』と。
彼はふと、睨んでいた資料から顔を上げ、天を仰ぐ。
「ああ……、そうか……! あった……エーテルだ。量も充分に……。これなら……!」