「サンタさんだ!!」
背後からの少女の声に、振り返る猫御侍と買い出しに連れてこられたブラッディマリー、そして何処かの誰かに変装したラザニア。
「……もしかして僕のこと言ってる?」
キラキラした笑顔を向けられて眉をひそめるブラッディマリー。
「君だろうねぇ、真っ赤な服を着てるし」
「髪も白いからな」
「それだけで間違える?袋もヒゲも無いんだけれど」
「忘れて来たんだろう」
「慌てん坊だねぇ」
「前日に来ていないし、そもそも違うから」
話している間に二人と一匹に駆け寄る少女。
「サンタさん!!あのね、私サンタさんに会いたかったの!!」
「悪いけど、僕はサンタじゃないよ」
「違うの……?」
「見習いさんだよ、若いでしょ?」
「そうなんだ!!」
「御侍、適当なこと言わないでよ……とにかく、違うから。
早くどこかに行かないと、君の全身も真っ赤にしちゃうよ?」
「新たな都市伝説か?」
「もしもし、神父メン?」
「やめて!!」
プレッツェル神父に呼び出し電話をかけるふりをする猫御侍を取り押さえるブラッディマリーを放置し、ラザニアは少女に用件を聞き出す。
「見習い、君に渡したい物があるそうだ」
「だから見習いじゃないって……」
「はい、これ!!」
少女が差し出してきたのは、手のひらサイズの小さな人形とお手紙。
「いつもプレゼントもらってるから、私もサンタさんに、プレゼント渡したいの!!」
「……えー……」
どうしたものかと悩んでいると、横から猫御侍のもふっとした手が伸びてきた。
そして少女から贈り物を受け取り、ブラッディマリーの手に持たせた。
「ありがとうね、ちゃんとサンタさんに渡しておくね」
「うん、お願い!!」
少女はお礼を言って、バイバイと手を振りながら走り去って行った。
「ラザニア、お願い」
「わかった」
猫御侍が言うと、ラザニアはスッと人だかりの中に消えていった。
「……僕は関係ないよ、御侍が受け取ったんだからね」
猫御侍の意図を察したブラッディマリーは、嫌そうに宣言する。
「そう?それじゃあ仕方ない、ラザニアに君のフリをして行ってもらおっか」
「やめてよ、殺す相手に変装するのが趣味な奴なんかに化けられたくない。
僕はまだ生きたいんだけど」
「ならやるっきゃないねぇ」
ニャハハと笑う猫御侍に、そうだこういう御侍だったと諦めため息をつくブラッディマリー。
とはいえ勝手に仕事を増やされたことに怒りはあるので、うさを晴らすべく猫御侍を抱っこしてお腹をモニモニする。
「戻った、リストに乗っていない子どもだった
すぐに行ける場所に住んでいる」
じゃれる一人と一匹の元に戻るラザニア。
「オッケー!じゃ、買い出しの続きに行こっか
あ、プレゼントリストの項目、一個追加しといてね」
「はいはい……」
そして二人と一匹は、今夜のギルド主催の『子ども達にプレゼントを✨🎁✨サンタ大作戦!!』で配るプレゼントの買い出しの続きに戻るのだった。