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    辺獄ジムハイ冒頭晒し はやくエロに行きたい

    辺獄ジムハイ ハインツは馬上から、広大な芝生の先にある邸宅を眺めていた。あれは自分の生家だ。もう何年も帰っていなかった。屋敷のたたずまいは変わらないが空は暗雲に覆われ、昼とも夜とも異なる、この世のものではない暗闇に包まれている。空は黒薔薇のような紫色で、我が邸宅は今にも朽ちそうな白灰色をしている。ハインツは手綱を引いて馬を進ませ、今は無人であるはずの屋敷へと近づいていった。
     辺獄というこの世ならざる世界では、戦や抗争、事件によって命を落としたものたちの魂を数多く見てきた。そこでふと、自分の生家のことが気になったのだ。家がどうなっているか、どうしても見ておかなければならない気持ちに駆られた。そこで旅の仲間たちにことわって、こうして一人で赴いたのだ。
     ハインツはランプをともして、暗い屋敷の中を見て回る。屋敷の中に誰もいないのは想定内だった。このあたりは戦に巻き込まれたわけでもなければ、刃傷沙汰があったわけでもない。ひょっとしたら大昔に死んだ先祖にでも会えるかと思ったがそんな訳もなく、ただ無人の屋敷がひっそりと佇んでいるだけだ。自分の生家にこんな形で帰るとは思ってもみなかった。元の世界ではいまでも使用人たちが毎日、絨毯を洗いシーツを変え、羽箒で埃をはらい主人のいない家を整えているだろう。でもここには誰もいない。その事実にハインツは安堵していた。不業の死を遂げたものや、強い恨みを持って死んだものは、この屋敷にはいないのだと確認できたからだ。
     階段をあがり廊下を渡って自分の部屋に入る。気味の悪い暗闇に包まれている以外は、家を出た時となにも変わらない。家のことが気になって妙な胸騒ぎを覚えてここへ来たものの、杞憂に終わったようだ。もう少し家の中を見て回ってから、仲間たちの元へ戻ろう。そう決めて小さくため息をつきながら暖炉の上にランプを置いたところで、ハインツの動きがぴた、と止まった。背後から何か聞こえる。廊下をゆっくりと歩いてくる、誰かの靴音だ。動きを止めて息をひそめてやりすごそうと思ったが、靴音はこの部屋に向かってくる。ついには開け放したままのドアから入ってきて、ハインツに向かって歩いてきた。振り向くどころか、指一本動かせない。死者たちの魂だけが行き交うこの世界で、ハインツ以外に屋敷の中にいるのは、いったい誰だろうか。一人の男の顔が脳裏に浮かんだが、受け入れたくはなかった。受け入れたくないからこそ、振り向けなかった。靴音はハインツの背後でぴたりと止まり、手が差し伸ばされる衣擦れの音が耳に入った。ハインツの目に、背後から伸ばされた手が目に入る。その手には何かが握られていた。背後から伸びた手が暖炉の上のランプの隣にゆっくりと置いたのは、金の懐中時計だった。ハインツは勢いよく振り返る。そこには誰もいなかった。向き直り、暖炉の上に置かれた懐中時計を手に取る。ダンフォールの紋章入りの懐中時計。これはまちがいなく、かつてハインツが幼馴染であり親友でもあった、いまは亡きジムに贈ったものだった。

     ハインツは揺り椅子に座って、パイプをくゆらせていた。右手にパイプをもち、左手にもった懐中時計を眺めていた。今でも止まらず時を刻み続けている。ハインツは旅に出る前に、これをジムに贈ったのだ。ずっと大切に持っていてくれたのだろう。でもなぜ今この場所で、これをハインツに返してきたのだろうか。もう持っていたくないということなのだろうかと考えると悲しかった。ジムがこれを持っている限り、二人の友情は変わらないままだと思っていたのに。
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