Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    kakuni_harumaki

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 11

    kakuni_harumaki

    ☆quiet follow

    【五悠】
    現パロ。社会人×DK

    ※偶然知り合った二人が付き合うまで
    ※虎視点・五視点・伏視点の全3話で今回は虎視点です。(五視点・伏視点はいつか)
    ※今回はハッピーエンドですが、最後まで読むと若干不穏。何でも許せる方向け

    裏口ハッピーエンド物心つく前に両親を亡くし数年前に唯一の肉親であるじいちゃんを見送った。
    天涯孤独の身だけどじいちゃんが残してくれた家と大学卒業までは持ちそうな貯蓄があって、大学とバイトで目まぐるしいけれど気のおけない友人もいて俺の人生はとても順風満帆だ。

    そして、じいちゃんが残してくれたものの一つに『人を助けろ』という遺言があった。
    じいちゃんに言われなくても自分で出来る範囲で人を助けられるのなら助けたいからその遺言に何も問題はない。
    ──だけど俺は今とても迷っている。
    今日は絶対に落とせない課題の提出日で朝方までレポートを書いていた為寝坊をした。
    教授は一秒でも提出が遅れたらどんな理由でも受け付けてくれない真面目な人で、俺はやっちまった!と絶望したけど走ればギリギリ間に合う時間で徒歩圏内の大学で良かった!と神に感謝しながら走っている最中に俺は出会ってしまった。
    近道の車も通れない細い道路、そこに落ちている黒い財布に。
    「あーーーー!」
    交番は逆方向。寄れば確実に遅刻する。
    俺の次に通る人が届けてくれるかも知れない。そう思いながら財布を持ち上げ中身を確認した。
    駄目だ!諭吉が沢山居る!もし次に通った人が悪い人だったら自分の懐にしまうだろう。
    ──人を助けろ。
    「……しゃあねぇ」
    じいちゃんの顔が浮かんだ以上無視する訳には行かない。
    俺は財布を持ったまま逆方向にダッシュした。

    交番に財布を届け、諭吉の他に免許証も入っていたらしく「これなら持ち主も探しているだろうからすぐ見付かるよ」と警察官に言われホッとした。

    週に一回は交番に落とし物を届けるから俺は常連みたいなもので、拾得物の書類の書き方も慣れたものだ。
    自分の情報を書き込み落とし主からのお礼はいらないと記して、じゃあお願いしまーす!と交番を飛び出た。


    「まぁそうだよなぁ…」
    結果から言えば課題の提出期限には間に合わなかった。
    「お前間に合わなかったのか?」
    「4分アウト」
    「寝坊か?」
    「寝坊もしたけど交番寄ってた……」
    「いつものやつか……もっと余裕を持って課題やれ」
    『本日の課題受け取り〆切』
    と、貼り紙がされたドアの前で項垂れた俺を見て通りすがりの伏黒が声を掛けてくれた。
    伏黒は大学で知り合って物静かで真面目な勤勉学生と見せかけて元ヤンですぐ手が出る(本人に言うと怒られるけど)けと意外と面倒見が良くて、レポートが終わらないと泣きつけば助言してくれるし、俺が一目惚れした!と言えば変な顔しながら聞いてくれるから気付けば一緒にいる時間が長い友達だ。
    「今日はどうすんだ?」
    「今日講義昼からでさ課題出す為に来たからいったん帰るわ」
    「そうか……俺からも教授に理由話してみるか?」
    「んにゃ大丈夫。ありがとな!」
    伏黒は小言を言いつつも俺が遅刻する理由を知っているから助けようとしてくれる良い奴だ。
    そんな伏黒の手を煩わせる訳にはいかないしあの教授は多分考えを変えたりしないしまあしょうがない。
    他の単位は落とさないようにしようと思いながら俺は来た道を戻る事にした。







    『それがどうしても直接お礼を言いたいと言っていまして……』
    「はぁ」

    帰宅して早々見知らぬ番号からの電話に出れば警察からだった。
    一瞬何かしたかと身構えたが何の事はなく俺が今朝拾った財布の持ち主が見付かりその本人が拾った俺にお礼がしたいから連絡先を教えてくれと言って来たらしいのだ。
    今まで交番に落とし物を届けてもお礼はいらないと言って来たので向こうからお礼を言いたいパターンもあるのかと驚いた。
    でも俺はお礼が欲しくて拾った訳じゃないし持ち主が見付かればそれで十分だから断ろうとした。
    『財布がね、お祖父さんの形見らしくて本当に困っていたらしいの。きちんと届けてくれた事が嬉しいからどうしても直接お礼を言いたいと言ってらして……』
    お祖父さんの形見。それを聞いた瞬間お礼を断ろうと思っていた考えは消えていた。
    大切な物を失くして途方に暮れていたのかも知れない。それを拾って交番に届けくれたら俺だったらお礼を言いたい。それでその人の心が軽くなるならお礼の言葉だけ受け取ろうと、俺は自分の電話番号を相手に教えても大丈夫ですと伝えた。



    ──そう、お礼の言葉だけ受け取る筈だった。
    その日から一週間後、俺は何故かその人と食事をする事になり待ち合わせ場所に向かう所だった。
    今でも何故か分からないけど電話をくれた相手の声は思ったより若くて、本当に助かったから食事をご馳走させて欲しいと言われた。それはと断ろうとしたら美味しい焼肉をご馳走したいと言われ俺は秒で飛び付いてしまった。
    だってしょうがないじゃないか!焼肉だぞ!貧乏学生には中々手の出ない高級品だ。
    電話の相手──ゴジョウさんと言うらしい、は笑いながら沢山食べてねと笑っていた。今思い出すとちょっと恥ずかしいな。
    「悠仁君?」
    「あ、はい──え?」
    待ち合わせ場所に着いたらとんでもない長身の美形に声をかけられた。
    190cmは超えていそうな長身と白銀のサラサラと輝く髪、サングラスの隙間から覗く瞳は青色でモデルや芸能人みたいな人だった。多分年上だけど年齢不詳の綺麗な男の人。何でこんな人が俺に声掛けるんだ?いや今俺の名前呼んだ?と戸惑っていると目の前の美形は柔く微笑んだ。
    「はじめまして、五条です。今日は無理言ってごめんね」
    「え!?あっ虎杖悠仁です!」
    「来てくれてありがとう悠仁君」
    サングラスを取って再度微笑んだゴジョウさんは近くを歩いていた女性陣の視線を独占していた。
    そのまま「じゃあお店行こうか」と俺を案内する姿までスマートで俺はこんな人とちゃんと会話出来るのだろうかと不安になった。


    結論から言えばそれは杞憂で、五条さんとの食事はとても楽しかった。
    少し年上だと思っていたら俺の13歳年上でアラサーに全然見えない!と驚いたけど童顔なんだと笑っていた。
    五条さんはノリも良くて波長も合いお肉も普段食べている物は何だ?という位美味しくて俺はテンションが上がってしまい初対面なのに自分の話を沢山してしまったけど五条さんはずっと優しく聞いてくれていた。
    調子に乗って食べ過ぎてしまったけど五条さんは
    「最近仕事でもプライベートでも嫌な事が続いてね。終いには大切な財布を落としてしまいもう戻って来ないだろうと思っていて……拾ってくれた人がいると聞いて本当に救われたんだ……感謝してもしきれない。だから沢山食べて」
    と、ずっとニコニコしていた。

    しかも五条さんは映画好きで俺と好みが合い今度好きなシリーズの新作が上映されるからつい「一緒に観に行く?」って言ったら「行く行く!絶対行く!」と前のめりでオッケーしてくれた。

    そうして偶然から出会った年上の友人が俺に出来た。


    「怪しくないかそいつ」
    「何が?」
    「そのゴジョウって男だ」
    昼時の大学の食堂は賑わっていて俺はこのガヤガヤした感じが好きだが伏黒はあまり人混みが好きではないらしく眉間に皺を寄せてたぬきうどんをすすっていた。
    俺は親子丼を食べながら最近良く遊ぶようになった五条さんについて話したら伏黒は眉間の皺を更に寄せて言い放った。
    「凄い良い人だよ。気が合うし」
    「財布拾って貰った位で焼肉奢るか?10以上も年の離れた学生と何回も遊ぶか?」
    「うっ」
    「しかも大学に電話までして財布を拾ってくれたなんて言うか?」
    「でもそのお陰で教授に話が伝わってレポート受け取って貰えたんだぞ!……あ」
    そう、五条さんは大学に『財布を拾ってくれた生徒が居て本当に助かったから大学にもお礼が言いたい』と電話をしたらしくしかも五条さんはあの大手五条グループのCEOらしく大学としても良くやったと!教授に褒められた。だけど俺はふと気付いてしまった。
    「俺、五条さんに大学生とは言ったけどどの大学か言ったっけ」
    「ほら見ろ怪しいじゃねぇか」
    「いやいや、近くの大学に適当に電話しただけかもしんないし!」
    伏黒のまだ何か言いたそうな視線から逃げるように俺は親子丼をかきこんだ。
    今日の夜も五条さんに会うので余計な事は考えないようにしよう。







    「いやー……凄かった」
    「中々面白かったね」
    今日は五条さんの家にホームシアターがあるから映画を観ようと誘われた。
    深く考えず五条さんの家に来たもんだからタワマンにビビり高層階にビビりその部屋の広さにもビビり更にホームシアターの設備にもビビり全方位にビビり散らかした俺にも五条さんはいつも通りな感じでメロンソーダを飲んでいて映画を見始めて数分経った頃にはすっかり俺の緊張も解け迫力の大画面に没頭していた。
    「家でこんなに大画面で映画観れるなんて凄ぇ!音も臨場感凄かったし!」
    「ははは。凝り出したら止まらなくなっちゃって。良かったらいつでも来てよ」
    「そんな事言ったら毎日来ちゃうよ」
    「良いよ。悠仁なら」
    優しい顔で五条さんが微笑む。本当にイケメンは凄い。俺でもときめいてしまう。
    「五条さんそうやって女の子口説いてんでしょ!」
    「え~そんな事しないよ~」
    「怪しい……」
    「しないよ。家に誘ったの悠仁が初めてだし」
    「そうなん?」
    「うん。僕あんまり自分のテリトリーに他人を入れたくないから」
    五条さんの言葉にじゃあ俺はどうなんだと思っていたら顔に出ていたのか五条さんはその美しい顔を更に近付けて笑みを深くした。
    「悠仁は特別」
    「イケメンずりぃ~~~」
    俺は誤魔化すようにその辺にあったクッションに顔を埋めて呻いた。そうしないと顔が赤いのがバレるからだ。その俺の耳に楽しそうな笑い声が降ってくる。
    くそぅ俺で遊んでるな。
    最近俺はおかしい。五条さんと一緒に居ると楽しいけれどたまに心臓が苦しくなる。
    酷くなるようなら病院とか行った方が良いんかな……
    「ねぇねぇもう一本観よ?これこの前悠仁が観たいって言ってたやつ!」
    「やったー!観よ観よ!」
    五条さんがブルーレイをセットして画面が明るくなる数秒間、薄暗闇の中その横顔を盗み見る。また心臓がギュッとなる感覚がして振り切るようにして俺は画面に集中した。







    「ねぇ虎杖君って五条さんと知り合いなの?」
    「へ?何で?」
    「この前街で一緒に歩いてるの見掛けて……あの私五条さんとお話してみたくて……」
    五条さんと会った回数が両手の指を越える頃、大学内でそう声を掛けられる事が増えた。
    五条さんは元々大学生向けにセミナーとかやってたけど最近メディアの『注目の若手実業家特集』とかで目にする機会が増えて『イケメン社長!!』とSNSでプチバズっていたのを俺は知ってる。
    俺と五条さんが街中をブラついていたのを同じ大学の子が見ていたみたいでそれからちょこちょこ五条さんを紹介してくれと声を掛けられるのだ。
    「ごめん。そういうの取り次がないでって言われてるんだ」
    「そっか……ありがとう」
    名前もうろ覚えなその子は残念そうに去っていった。
    五条さんにそう言われた事はないけど『隙あらば玉の輿って寄って来る女多くて辟易する。オッエー』って言ってたから嘘ではない。……嘘ではないけど少し良心が痛む。そのせいか最近五条さんの事を考えて心臓がギュッとする事が増えた。
    週一位で会う年上の友人はとても多忙だ。もし彼女とか出来たらあっという間に俺と会う優先順位は下がるんだろうなと思ったら今までで一番心臓が痛かった。







    「五条さんはさぁ彼女とか作んねぇの?」
    「えー彼女ー?」
    五条さんと知り合ってから季節が二度程変わった。週一位で会うもんだからもうどこまで踏み込んでも良いかの境界線も分かるようになった。
    勝手知ったる五条さん家のソファーでポテチを摘まみながら今観終わった映画が恋愛映画だったからするりといつも思ってる疑問が口から出た。
    「最近俺と居るの見掛けた大学の人から『五条さんは彼女居るのか』って良く聞かれるからさー」
    「んー彼女は居ないけど好きな子は居るよ」
    「えっ五条さんの片思いってこと!?」
    「そうそう。全然靡いてくれないの」
    「あの五条悟なのに!?」
    「どの五条悟だよ」
    ケラケラ笑っているけれど真剣な目をしているから五条さんは本気でその子の事を好きなんだと思う。ズキリとまた心臓が痛んで、俺は気付いてしまう。
    あぁ、俺は五条さんの事が好きなんだ……好きだと気付いた瞬間失恋をした。
    「五条さんに好かれる子は幸せだと思うよ。気付いてないだけで絶対五条さんの事好きになるって!」
    「そうかなぁ……」
    「どういうところが好きなの?」
    「んー最初はさぁ偶然出会ったんだけと一緒に居るのが心地良くてね。元気一杯で誰にでも優しくて、寂しがり屋の癖に気遣い屋さんでね、その子の唯一になりたいって思ったんだ」
    「本気じゃん」
    「本気だよ。今までにない位仕事詰めて、その子家に呼ぶ為にホームシアター作ったり必死だよ」
    「……ん?」
    俺は引っ掛かって五条さんの顔を凝視するけど五条さんは優しく微笑むばかりで自分で、考えろという事なんだろう。
    え、五条さんは好きな子と会う為に仕事頑張って、その子を呼ぶ為に家にホームシアターを作ったのか。
    ……前俺以外の人を家に入れていないと言ってなかっただろうか。え、その、つまり、
    「五条さん、俺の事、好きなの?」
    「ふふ、せいかーい」
    マリンブルーの瞳が楽しそうに細められたまま近付いて来たけど俺はパニック状態で多分顔が真っ赤になっているだろう。
    「ねぇ悠仁、返事聞かせて」
    「分かってる癖に」
    「それでも悠仁の口から聞きたいよ」
    両手で俺の頬を挟み固定している五条さんからは簡単に逃げられないと観念して俺はゆっくり口を開いた。
    「俺も……五条さんが好き……多分」
    「何で多分なの!」
    「今自覚したばっかなんだって!」
    「ふふ……そっか。ねぇ悠仁、僕達出会いが結構運命的だったと思うけど、ゆっくり悠仁と歩いて行きたいな」
    「うっプロポーズみてぇ」
    「そう捉えてくれて構わないよ。……悠仁好きだよ」
    至近距離にあったマリンブルーが更に近くなって堪らず目を閉じた瞬間唇に温かい感触がした。初めて触れた感触はすぐ離れてしまいそれに寂しくなった俺は目の前の体に抱き付いた。
    五条さんは嬉しそうに「やっと捕まえた」と俺をぎゅうぎゅうと抱き締めてくれた。
    俺は幸せって五条さんの形をしているんだなと気付いてその温もりを堪能するべくもう一度目を閉じた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😍👏👏👏👏💘💘💘💘💘😍👍😍👍😍👍😍👍😍👍👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works