狐狸パロ 山崎は途方に暮れていた。
自分が子どもであった時分のことなど、とうの昔に忘れている。何を食べさせ、何をしてやれば良いのかもわからない。
山崎が本性を現して食いつけばひと吞みで腹の中に収まりそうなほど小さな狸がジッと自分を見つめている。
「うゆん」
どうしたものかと思案していると、胡座をかいた山崎の足の上に子狸が這い上がってきた。寒そうに身を震わせ、山崎の温もりを求めるように身体を擦り付けてくる。少なくとも「へーすけ」と名乗ったこの小さな存在には温かさが必要らしい。人の姿のままでは彼が必要とする温もりは与えられないだろう。
山崎は変化を解いて本性を平助の前にさらした。人の姿はさして大きくはないが、本来の山崎は大狐の名に恥じぬ大きさをしている。熊でさえ、山崎の姿を見ればすごすごと去って行く程度には大きい。巣穴がやけに大きいのは本性の自分を納めるためだ。
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