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    実菜穂ワールド

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    実菜穂ワールド

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    「さあ、冒険に出かけよう。」

    ヒューバー島過去編二作目、こーらるちゃんです🪸

    ##過去編
    ##オリキャラ

    過去編② こーらる 毎日毎日同じような一日。学校に行ってお勉強して、授業中はいつも夢の中。先生の声で目を覚ましたら、放課後の補習。
    「面倒くさ〜い!退屈だ〜っ!!」
    夕陽に向かって大声で叫ぶ。今の私にとってはただ自然だけが友達。それから本と、ゲームと、あとは…。
    「姉ちゃん!家の前で大声出さないでよ!」
    「わっ!るーちゃん?!帰ってたの?!」
    「帰ってたも何も…。今テスト期間だから部活ないんだよ。言ったはずだけど?」
     るーちゃん―くらげは私の妹。真面目でちょっと気が強い。ゲームが好きってこと以外には特に共通点はない。友達も多いし成績もいいし、髪の色は私と殆ど逆の白色。
    「あとさ、るーちゃんって呼ぶのやめてよ。」
    るーちゃんという呼び名は、彼女が幼い頃に「くらげ」と言えなくて「るらえ」みたいな発音になってて、そこから私が彼女を「るら」と呼ぶようになったのが始まり。愛称のつもりだけど本人は嫌なのかな。まあいいや。
    「姉ちゃんもちょっとは勉強したら?また先生から呼び出しの電話があったんだよ?」
    「ええ〜っ、また〜?!」
     急いで自分の部屋へ行く。机の上に課題をバッと広げて、鉛筆を持って、ノートに鉛筆の先が触れた瞬間、意識が飛んだ。

     ―逢えるよね、生まれ変わっても…。
      もしまた出逢えたなら、その時は…。―

    「……ちゃん、姉ちゃん!晩ご飯!!」
    「わあっ…?!」
     るーちゃんの声で目が覚めた。またあの夢だ。最近同じ夢ばかり見る。
    「それから、父さんが話あるって。」
    「えー…。絶対お説教じゃん…。」
    るーちゃんに引きずられるようにして、私はダイニングルームへ向かった。
     テーブルに並ぶエビピラフ。私の大好物である。思わず舌なめずりをしてしまい、恥ずかしくなって顔を隠した。お父さんがキッチンの奥からこちらへ来た。
    「そうそう、さんごに話があるんだ。」
    お父さんの声のトーン的に、どうやら叱責ではないようだ。ほっと胸を撫で下ろした。
    「話って何?」
    「お前、自然が好きだろう?そんなお前に丁度良さそうなプログラムを見つけたんだが。」
    「えっと、なになに…?無人島移住パッケージ?無人島に住むの?流刑?」
    「いや、そうじゃなくて…。自然の中でなら机に向かうよりも勉強…ううん、学習ができるんじゃないかと思って……。」
    まるでお伽話のような話だ。大自然の中で本を開いて、鳥の声や風の音を聞きながらゆったりとお勉強をするなんて!急いで晩ご飯を食べて、チラシを見ながら申し込みをした。
    「へえ…、姉ちゃん出てっちゃうんだ。」
    「寂しいなら一緒に来る?」
    「別に寂しくなんかないし。」
    少し機嫌を悪くしたるーちゃんに続いて私も自分の部屋に戻った。すぐに荷造りをしなくては。明日からの一人暮らしに備えて…。

    「いけない!寝坊しちゃった?!」
     無人島出発初日からいきなり寝坊してしまうなんて。荷物を持って飛行場を目指す。長い長い坂を駆け下りて、八百屋さんに挨拶をして、街のもの全てにお別れを言って、ようやく飛行場に辿り着いた。
     飛行場ではパイロットのロドリーさんが暖かく出迎えてくれた。先に迎えが来たらしい他の参加者達に見つめられて少し緊張する。
    「えー、海野さんですね?お待ちしてましたよ。それでは、ただいまより無人島へ出発します。快適な空の旅をお楽しみください!」
    飛行機が空へと飛び立つ。あっという間に雲の上にぬけて、どこまでも広い青空が私の目に映った。空はこんなにも美しいのか。
    「遅刻のお嬢ちゃん、隣、いいかい?」
    カラッとした明るい声が耳元で聞こえた。
    「こんにちは、お姉さんも無人島へ?」
    「この飛行機に乗っている人はみんなそうだよ。それにしても驚いた。参加者の中で大人なのはあたしだけ。他はみんな若い子供達だなんてね。最近の子はすごいよ。」
    パタヤと名乗るそのお姉さんはとてもお喋りで、私を退屈させなかった。彼女はどうやらタイという国からやって来たらしい。
    「こんな経験、滅多にできないからね!」
    ケラケラと笑うパタヤさんは、ふっと近くに座るネズミの少年に目をやった。
    「アンタも一緒にどうだい?兄ちゃん。」
    少年は目をぱちくりさせてパタヤさんを見つめた。少し俯いた後、こちらへ来た。
    「ど、どうも……。」
    「恥ずかしがることないよ!皆初対面だけど皆仲間じゃないか!アンタ名前は?」
    「えっ、えっと……。」
    ピースと名乗るその少年は恥ずかしがっているというよりはおとなしい感じで、このプログラムには新しいもの好きな家族からの勧めで参加したようだ。
    「もうすぐ着くってさ。さっき少しロドリーさんと話して来たんだ。」
    「コックピットって、入れるの?!」
    「基本的には入れる…って、チラシに書いてあったけど、2人とも読んでない感じ?」
    「あっ………。」
    「あんたら、よく似てるな…。」
    パタヤさんとピースくん、それから私とで話しているうちに飛行機は無人島に到着した。
    「すごい!空気が美味しい!!」
    「向こうのテントでたぬきちさん達が待ってるよ。急ごう!」
     草ぼうぼうの島の中を少し歩くと、草の生えてない広めのスペースにたぬきちさんのテントが見えた。どうやらあそこが「案内所」らしい。たぬきちさんが私達を見つけて歓迎してくれた。
    「無人島移住パッケージへのご参加ありがとうだなも!えーっと…、さんごさんにパタヤさんにピースさんだもね!」
    「こーらるって呼んでください!」
    「じゃ、じゃあ、こーらるさん?」
    新しい生活を始めるんだもの。呼び名も一新してみたかった。今日から私は「さんご」改め「こーらる」である。
    「今から皆さんにはオリエンテーションをしてもらうだなも!自分が生活するテントを張って、その後ここでキャンプファイヤーをするだなも!好きな場所にテントを張ったら、キャンプファイヤーの材料を集めて来てね!」
    キャンプファイヤーなんて今まで一度もしたことがない。私はワクワクしながらテントを張って、ワクワクしながら材料を集めに行った。木の枝とスムージー用のさくらんぼ。この島は資源が豊富だ。
     島中を歩き回っていると、目の前を人影のようなものがスッと通り過ぎた。
    (あんな真っ白な服の人、いたかな…?)
    後を追いかけようと思った時にはもう、その人影はどこにもなかった。

    「皆さん仕事が早くて助かっただなも!ではただいまより、無人島移住記念キャンプファイヤーを始めるだなも!」
     たぬきちさんがみんなで集めた木の枝に火をつけて、キャンプファイヤーが始まった。
    「すごく綺麗…!」
    「これの周りで踊るんだよ。」
    「無人島生活の最初の思い出がこんなに素敵なものになるなんて…あれ?」
    「こーらる?どうした?」
    話しながら、私はあることに気づいてしまった。それは…。
    「人が住んだら無人島じゃなくない?」
    「あっ。」
    無人島に人が住んだらそれは有人島である。何故今まで気づかなかったのだろう。
    「た、確かに…。でも、心配いらないだも!今から皆で名前をつければいいだも!」
    「名前…ヒューバー島とか……。」
    好きなアニメに出てくる好きなキャラクターの名前を文字って適当に言っただけだった。もちろん、小声のつもりだった。けれど耳が大きいネズミのピースくんには聞こえていたようだった。
    「ヒューバー島…、いいじゃん?」
    「えっ」
    「あたしも賛成!たぬきちさん達は?」
    「あのっ」
    「いい名前だもね!!」
    まさか自分が適当に言った名前がここまで好評だなんて思いもしなかった。
    「今日からこの島はヒューバー島だなも!」
    まさか自分が適当に言った名前に決定するだなんて思いもしなかった。
    「では、名付け親であるこーらるさんには、この島の島民代表…すなわちリーダーに就任してもらうだなも!」
    「よっ、島民代表!!」
    まさか自分が適当に名付けたことで島の代表にされるだなんて思いもしなかった……。
     こうして私の無人島…いや、ヒューバー島での生活が幕を開けた。

     新しい場所に慣れるため、島を散歩してみる。心地良い風が頬を撫でる。そのとき、またあの人影が通り過ぎた。
     と、思ったら、人影はこちらへ向かってくる。
    「貴方、ここは危険だよ…。」
    その人は私に話しかけてきた。小さな体、背中の大きな翼、頭には金色に光る輪っか。その姿は、まるで…。
    「すごい!天使だ!えっ、その翼って、本物?触ってもいいかな?」
    「天…使……?」
    「頭の輪っかもすごい!本物の天使だ!」
    間違いない、この人は天使なのだ。この島には天使がいる!
    「あなた、なんていう名前なの?」
    聞きたいことはたくさんあったが、その中でも今一番気になることは天使さんの名前。名前がわからないと質問もしづらい。
    「名前はあまりに長いので、縮めて『ホリー・タルコット』と名乗っている。ぼくの名を聞いてどうするつもりか…。」
    「ホリー・タル……、よくわからないから、『ホタルちゃん』って呼んでもいいかなぁ?」
    「……好きに呼べばいい。」
    「やったー!あっ、私のことは『こーらる』って呼んでー!」
     私はホタルちゃんにたくさん質問した。どこから来たのか、いつから来たのか、私に話しかけてきたのはなぜか。ホタルちゃんの話は難しくて、詳しいことはよくわからなかったが、どうやら私を悪いものから守ってくれるらしいことはわかった。
    「じゃあ、これからは安心して生活できるんだね!」
    「絶対安全ってわけじゃないけど…。」
    思いがけない出会いもあって、私はこれからの島暮らしがますます楽しみになった。
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