クト○ルフ風水王「はあ!?気が付くと二人は何もない白い部屋にいました、やと!?」
「この上なく雑な導入台詞をありがとう、みずかみんぐ」
「発言がメタいねん。ほんで?」
「どうやらぼくたち、何もない白い部屋に閉じ込められたみたいだ」
「それはさっき俺が言うた」
「二人で協力して脱出しよう」
「協力言うてもな…」
俺は気がつくと白い部屋におった。
この下り何回やらせんねんほんま。三回目やぞ。それはそうと白昼夢みたいな感覚やな、さっきまでボーダーの廊下歩いとった筈が、今は部屋の…真ん中か?その辺に立っとる。
辺りを見てみてもなんや、ぼんやり発光しとるみたいな白い部屋でイマイチ遠近感持たれへん。
ふっと自分を見下ろすと換装体で何となくホッとする。隣の王子も同じくシュッとした隊服姿や。
とりあえず生身よりは頑丈なことは確かやし、ほなもう出られるんとちゃう?
「弧月抜いたんか?」
「もちろん。結果は何もなし。ブレードにも壁にも確かに実体はあるのに、壁に差し込むとまるで手応えがない」
どうぞ、と王子の差し出す弧月を受け取って壁に刺してみるも、なんも抵抗感なく吸い込まれるだけや。なんやこれ。
「きみ弧月触ったことある?」
「阿呆、あるわ」
適性あったらアタッカーやっとる。ほんま失礼なやっちゃ。
弧月を返すと王子が静かに納刀する。
納刀はイコさんの方が綺麗やな。何となく得意な気分になり鼻の下を指で擦った。
にしても、おかしな部屋や。
十メートル四方ぐらいか、電気もないのに天井か?上の方が薄ぼんやり発光しとって、わりかし明るい。
ど真ん中にテーブルがある。近寄るとメモが一つあった。
「何やこれ?」
「分からない。ぼく読めなくて」
「はあ?」
取り上げて読んでみる。
「なちわたな ぬぬけの はなを……何やこれ、暗号か?」
「状況からすると、そうだろうね」
「他にはなんや、無いんか?」
「残念ながらぼくも今来たばかりでね」
「得意げに言うなや、自分も何も分からへん言えや」
がしがしと頭を掻くと改めて、辺りを見渡してみる。
王子が言う。机の上にはメモ以外何もなく、椅子が二脚、置いてあった。何の変哲もない椅子や。
そこへ王子が腰掛けるだけで何となくええ椅子に思えてくるん、ほんまに何なん?
腹立つわ。
「よう分からんけど、つまりはアレやろ、脱出ゲームみたいなんとちゃうんか?暗号を解いたら出られる、よくあるやつ」
「本当にそうなのかな?」
「なんやて?」
「ぼくは今、目の前で話すきみのことをみずかみんぐだと認識してる。でも、本当に?これはぼくの脳が作り出した、みずかみんぐの幻想で……もしかしたら、きみが見て話しているぼくも、ただきみが作り出した幻想に過ぎないのかもしれない。お互いがお互いだと、どうやって知る?」
「われ思う故にわれあり、なら自分自身は本物やろ。ほな俺は本物、お前はどないや」
「お互いにお互いだけを本物と呼び合い、その情報を共有しているから、互いに本物だって?」
「そこ疑うなら、トリオン体の俺らはどないなっとんのや」
「それもそうだ、仮称みずかみんぐくん」
「そのけったいなあだ名がそもそも仮称やないか、くん付けすな」
メモを裏返す。何気なくなぞると指先に凹みが分かる。
左右を見渡して、鉛筆なんか無いかと思ってあちこち見るけど、見れば見るほどなーんもない。
白いテーブル。
「なにかお探しかい?」
反対側に座った王子がふと手を伸ばして、