ここからはあまり関係ない余談だが、海外の夢文化についても少し話したい。序盤に少し触れた「メアリー・スー」の起源を見ると1970年代には海外のファンフィク内で現代で言う腐女子と夢女子(夢女子っていう表記語弊を産みそうだからあんま使いたくないんだけど腐女子の対としてとりあえずこの文字を使用する)の対立構造があって、夢創作――所謂最強オリジナル主人公が無双するようなもの――をバカにする内容の小説に登場したキャラの名前が「メアリー・スー」だ。以後主にインターネットではそういう夢小説や最強主人公、自己投影をバカにするスラングとして使われるまでになっている。そう思うと夢=自己投影=メアリー・スー=痛いというような印象や構図の歴史は深いように感じる。
そんな昔から夢創作的なファンフィクが海外にもあったと知らなかった私は、過去アメリカが本土のジャンルで活動していた時期があった。その時も夢創作に飢えていたが人口の9割が海外勢だった上に夢小説は日本特有のものだと思っていた為に絶望していた。そもそも母国語の二次創作がねえ。だが、フォロワーに海外にも夢小説があると教わり、「キャラ×READER」(READERは海外でいう夢主の意)にたどり着き、翻訳ツールに突っ込んでめちゃくちゃな日本語からどうにかシチュエーションやセリフなどを感じ取りながら楽しんでいた。
ちなみに日本文化大好きな海外のオタクは普通にバイリンガル、トリリンガルがざらにいて、私も当時日本語、母国語、英語が堪能なインドネシアの方と仲良くし、日本でイベントが開催された時には一緒に遊んだ。日本語のアニソンとかめっちゃ綺麗な発音で歌える。何なら私より日本のアニソン詳しい。夢小説も昔読んでたとか。コンテンツの生配信などを同時視聴しながら喋ってる英語を翻訳してもらったりとかもしていた。スペック高すぎ。
話を戻そう。国が違ってもやってることは同じなんだと感動しながら海外産夢小説を読んでいたが違いもある。まず名前変換がない。その代わりに(F/N)(L/N)(H/C)(E/C)…等の文字が使われる。これらはそれぞれ(ファーストネーム)(ラストネーム)(ヘアカラー)(アイカラー)などの略語のようなもので、その記号が挿入されている部分は各自希望するものをいれて楽しんでね、というスタイルである。
それ自体も独特の文化だが、この×READR作品の「自分の好きなものを想像してね」の範囲がとても広いのがアメリカ的だなと凄く感じた。
日本の夢小説なら多くても夢主の名前、友人の名前、たまにペットの名前…せいぜい変換要素は登場するモブキャラクターの名前までだろう。しかし、海外の夢小説は主人公、友人の名前に留まらず主人公の髪色、瞳の色、肌の色、好きな色、好きな食べ物…などが先ほどの略語によって表現され、読者にゆだねられているのだ。お国柄って奴を感じる。おもしれぇ~。