女子会と荷物持ち今日は女子会。
買い物に行くらしい。
発案はおそらく釘崎。真希と唯の女子3人に、荷物持ちの虎杖、伏黒。じゃあついでに棘も、と借り出された。(パンダは一応誘ってみたけど断られた)
最早女子会と言う言葉に違和感を感じながら、待ち合わせ場所の寮の入り口に、唯とふたりで残りのメンバーを待っていた。
棘は段差に座り込む。昨日は夜遅かったから眠い。
唯は最近買ったらしいコートを羽織り、棘はダウンジャケットに口元を隠すようにマフラーをしていた。グレーのマスクもしている。
日差しがあって、最近にしては温かい陽気に感じるが、やはり風が冷たい。
「おはようございます、狗巻先輩!唯さん!」
「ツナマヨ」
「おはよう」
寮の入口から最初に姿を見せたのは意外な所で虎杖だった。続いて伏黒。おはようございます、と丁寧に挨拶をしてくれた。座り込んだまま棘も応えた。
女子メンバーが来ない。
そのまま、唯は虎杖と話し始める。
正直な所、虎杖や伏黒が一緒に行くと聞いて、少しだけムッとしたのを覚えている。
別に、この2人を信用していない訳でもない。付き合っているのを隠しているつもりもないけれど。知っているのか否かは分からない。
唯と虎杖の会話が続く。伏黒は一歩引いてまだ来ない女子メンバーが来るであろう寮の入り口を見つつ、時折虎杖の会話に口を挟む。
今は朝ごはんの卵焼きがなんとか、主に2人で盛り上がっていた。
棘は座り込んだまま、スマホの時計に目をやる。もうすぐ待ち合わせ時刻だ。
「虎杖くん面白いー!」
「だから、違いますって!」
仲良さ気な笑い声が聞こえて顔を上げる。
それと同時くらいに風が舞って。
落ちた葉が舞っていた。
「わ。やっぱり寒いね」
誰に言うでもなく唯が呟く。
彼女の髪が風に揺れて一瞬ふわりとなびいて、その白い首筋を露わにした。
首筋に、赤い痕が見えた。
…気がした。
「おかか…」
「狗巻先輩?」
「棘?」
「……?」
立ち上がって唯の元へ走り、その腕を引っ張る。
唯は状況がわからずにキョトンとしていた。
「ツナツナ」
と、唯を引っ張り、棘は自分のマフラーを外して、唯に差し出す。
「ツナ!」
「え?着けるの?」
「しゃけ!」
困惑する唯の首元に、そっとマフラーを当てがう。そのまま棘はマフラーを首元にぐるっと一周させて、ヨシ。と頷いた。
「え…?棘、変じゃない…これ…」
可愛らしいコートに男物のマフラー。
バランスが悪いのは…わかっている。
わかっているけど。
棘は唯の両頬に触れた。
彼女の頭を固定したまま、頷く。
「おかか」
とるな、と。
唯は眉をハの字に、明らかに困ってはいるが。それでも棘に頷いて返してくれた。
制服なら、隠れる位置にしたはずだったけど。
「何してんだオマエら…。朝からイチャつくな」
「真希ちゃん!」
ぱっと腕を離す。
唯は棘から離れて、真希を見上げるように向き直る。後ろからは釘崎の声も聞こえた。
「おはよう、野薔薇ちゃん」
「唯さん!おはようございます」
時間ギリギリだ。
唯は何事もなく、来たばかりの釘崎含む1年と話し始めた。
真希が棘の横でニヤリと笑う。
「私、目がいいんだ」
「…こんぶ」
棘は真希から目を逸らす。
「大概にしとけよ」
「おかか」
End***