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    meepoJlo

    @meepoJlo

    呪術の狗🍙棘 夢小説をこそこそ書いています。

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    meepoJlo

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    ただいま、と※死ネタです。
     自己責任でご覧下さい。

    棘×名家の優しい女の子
    呪言解釈違いかもしれません。



    *****










    唯が死んだ。



     そんな事、あるはずはない。



    と思ったけれど。
    でも、予感はあった。







    「いってらっしゃい」

    といつものように告げた彼女に「しゃけ」といつものように短く返した。
    背を向けて歩き出すと、唯はぎゅっと棘の制服の裾を握る。

    「こんぶ?」

    首を傾げて彼女を振り返り見れば。
    何だか不安気で、少し寂しそうだった。

    ごめん、と唯は慌てて手を離した。

    「大丈夫。何でもない」

    笑うその顔は、今にも泣きそうで。
    棘は思わず目を見開いた。

    長期の任務でもない上に、危険度も低いように思った。
    彼女も棘もここにいる以上、こうして別れるのは今に始まった事でもない。


    棘は踏み出した一歩を止めて、唯にまっすぐ向き直った。
    両手で、包み込むように頬に触れる。

    温かい。

    本当はずっと触れていたい。
    けど。


    棘はその頬をぎゅーっと摘んだ。

    「…ひゃっ?!……?!」
    「すじこ〜」

    ふざけて笑って見せると、唯もまた笑い出した。いひゃいよ〜と訴えて笑う。

    笑顔の彼女は、いつも通りだった。

    やっぱり、笑っていて欲しいから。


    棘は唯の頬から手を離して、口元を隠しているネッグウォーマーを少しだけずらす。露わになった口元を、ほんの少しだけ屈んで彼女の唇に重ねた。
    柔らい。唯の、甘い香りがした。

    「いってらっしゃい、棘」
    「しゃけ」







    安置された彼女の顔は、眠るように綺麗だった。
    けれど、よく見れば手足にアザや傷があり、胴体は見ないようにと告げられていた。

    「おかえり」

    と言う言葉はもう聞けない。




    棘が任務に出た後、緊急で唯も任務に向かったらしい。それは個人的に連絡が来ていて知っている。
    けれど、しばらくして連絡が付かなくなった。
    大きな任務ではないと聞いていたので、単に電波が悪いのかと思ったけれど。
    高専から電話があって、唯の危篤を知った。



    間に合わなかった。








    眠る唯の頬に触れれば、驚くほどに冷たくて。
     
    唇は乾燥してかさついている。






    ーーその優しさは、彼女の身を滅ぼす。
    と、誰かが言っていた。

    それ位に、唯は優しい人だった。
    呪術師に向いていないのは明らかで。
    本人も頑張ってはいたが、それは認めている。

    やはり血筋か、唯の力は大きかった。
    自分と同じか少し劣るかくらいだと認識している。
    けれどその優しさは、唯の昇級の邪魔になった。今一歩届かない。


    「才能ないんだよ。御家柄だけ」

    と、いつも笑っていた。

    「私に才能がないのなら、みんなのサポートが出来ればそれでいい」



    「でも、ただ守られているのは嫌だから、頑張るの」




    唯は逃げ遅れた少女を守って、

    死んだ。









    「こんぶ?」

    と、尋ねてみる。

    「ツナ」

    と、ただいまを繰り返す。


    「ツナ?」

     

    「ツナ?」




    「明太子?」




    けれど返事はなくて。

    次第に視界がぼやけてくる。
    ぎゅっと奥歯を噛み締めて、耐えた。



    何故?



    もし、自分が任務に向かわなければ。
    一緒に任務に行っていたら。
    文字通り、『止める』事が出来たかもしれない。



    何で、




    ねぇ、



    「…なん、で?」


    呟く棘の言葉は、もう呪言としての意味を成さない。
    呪言を聞く『相手』がそこにいないのだから。
    震えながら、痛いくらいに両手の拳を握る。


    しなないで。


    小さく口の中で呟くと。
    涙が言葉と一緒に溢れた。


    『 死なないで 』


    今度ははっきりと、もう開く事のない目を見ながら声に乗せる。

    涙が次から次へと溢れて。
    袖で拭っても止まる事はなくて。


    「おかえりって、言って…」


    「ねぇ、…?」




    「ただいまって、言うから」


    「ちゃんと、言うから」




    「 唯 」






    初めて呼んだその名前は、



    もう彼女に、届く事はない。








    ***







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