不器用に伝え合う「今日からお前俺の婚約者な」
幼いあの日、家族で挨拶に行って突然と言われた。
分家も分家で弱小な我が家で大した術式もない私に数百年ぶりの六眼と無下限術式の抱き合わせを持った次期当主様直々の言葉。
「なー」
「はい」
「俺任務続きだったんだけど、最近研究してるのもあって無敵状態!」
とある任務を境に悟様は最強の名に相応しい方により成られて1つ下の私は悟様が高専に行ったからと高専に入学して彼の婚約者で後輩となってる。
「ってか俺ら久しぶりに会うんじゃね?」
「1週間と2日ですね」
今年は呪霊が多い、去年起きた災害が原因なんだろう…階級関係なしに術師は任務に宛てがわれて私も同期の七海さんや灰原さんとあちらこちらと行ってる。
悟様は特級だ、1人で行かれてるし私となる事は殆どない…
「悟様、次の任務は大丈夫なんですか?」
「まーだ時間あるし大丈夫、久しぶりに会えた未来の旦那に酷くね?」
悟様は気まぐれだ、気まぐれで私を婚約者にしてこうも続いてる…いつ終わるか分からないのに好きになったら負けなのは分かってる。
女子寮になる私の部屋にやってきて私は次の任務の準備をしながら、悟様は冷蔵庫から出したお茶を飲みながら私をジッと見てる…
「あの…」
「んー?」
「そんなに見なくても…」
「いいじゃん、減るもんじゃないし」
実家に居る時もだったが悟様は突然やって来てこうして私を見続ける時がある、何で見られてるのだろうか?平々凡々な私を見詰めても楽しくはないだろうに…
「なぁなぁ、次はどこ行くんだよ?」
「○○県で七海さんと灰原さんと3人で行きます」
「あー、そうなんだ」
一気に不機嫌に近くなる悟様、なんで不機嫌になるんだろうかこの人は?泊まりがけになるだろうからと準備をしてく私を他所に悟様はサングラスを取ったのかテーブルにコトリと音が鳴る。
「あいつらと上手くやってんの?」
「はい、お2人とも優しくしてくれます」
冷静で大人っぽい七海さん、活発で年相応の灰原さん正反対なお2人だけど仲が良く私にも良くしてくれて3人の同期で今日まで忙しいながらもやり続けている。
「ふーん」
「何かありましたか?」
「いーや…あ、呼び出しかかったから行くわ」
「はい、お気をつけて」
「お前もな」
お辞儀をして悟様を見送る、悟様が飲まれていたお茶のグラスに入っていた氷がカランと音を立てると同時に扉が閉まり私はようやく落ち着けた…
「大丈夫?疲れた顔してる」
「どうせ五条先輩絡みでしょう、お疲れ様です」
「ありがとうございます、大丈夫ですので」
任務に向かう車の中灰原さんと七海さんが心配して話しかけてくれる、もう何年もの関係なのに慣れる事は無いが2人に心配をかける訳にもいかない。
「五条先輩って僕でも分かりやすいと思うんだ!」
「灰原、馬に蹴られる」
「アハハ!そうだ!うんうん!」
2人だけで話が完結していて私は分からず首を傾げる、七海さんがそんな私を見て…
「五条先輩もですが貴方も…はぁ…頑張ってください」
「は、はぁ…」
「まぁまぁ!あ!そうだ、夏油先輩にお土産買って行く約束したんだけど帰りでいいかな?」
「道の駅があるようですし帰りに寄って貰いましょう」
移動の車…補助監督の運転する車で何故かその補助監督青ざめていて一言も話さなかった。
車で2時間程行った先が任務地で森の中で補助監督が帳を下ろして私達は奥に進む。
その後から私達は地獄を見た、任務内容は2級だった…なのに…
「土地神が堕ちてる…!」
「ってことは…」
「1級案件…まさか…」
上は私が悟様の許嫁という事もあり嫌がらせをしてくる、こうして命を狙ってくるのもあったが周りを巻き込んでのは無かった。
「七海さん、灰原さんすぐに帳の外に!」
「貴方は!?」
「時間を稼ぎます!お2人なら外に行って電話の電波が入るところまで行けます!」
「1人じゃ危ない!」
「ですが!!」
今の私達にはこの案件は無理だ、悟様や夏油先輩なら可能だが私達には…ならば今できるのは足止めや時間稼ぎができる私が残り2人を外に送り外部に助力を頼む事。
今も土地神に防戦一方で消耗してく中で出来ることを考えてく中、七海さんに土地神の影が見えて口よりも体が動いた。
「なっ!!」
七海さんを押した瞬間に激痛が走る、脇腹を抉られドバドバと血が出て七海さんがすぐに支えてくれて灰原さんが自分の学ランの上で私の体を縛る。
2人が私を呼ぶ声がするが声を出そうにも息をするのがやっとで私の意識はそのまま闇の中へ落ちた…
次に目を覚ました時には時おり見た高専の医務室の天井があった。
「私…」
生きてる、脇腹も治っていて家入先輩の術式で治療をされたのだろうと分かった、右を見ると…
「え…?」
悟様が椅子に座り眠っていた、何故居るのだろう?呼ぼうとする前に悟様が目覚めて…
「あ!お前大丈夫か!?」
「は、はい…」
「連絡来たんだよ、お前の任務に着いてた補助監督、上に脅されて本当は1級の任務を2級に落としてお前らを宛がったって、それで行けば脇腹食いちぎられて死にかけたお前を抱えた七海とそれを灰原が守って逃げて帳から出た所で俺がバトンタッチして祓って瞬間移動習得してて良かったよ、硝子が言ってた後5分遅れてたらお前死んでたって」
悟様が助けてくれたのか…これは夢なのだろうか?私が死ねば悟様は大量のお見合いが待っていてそれが嫌で私を助けたのだろう…
「ありがとうございます」
「お前さぁ、何で自分犠牲にしたんだよ」
「それは…」
「お前が死んだら俺嫌だからな」
何が嫌なのだろう…
「悟様は別に私が死んでも困ることは無いかと思われます」
「はぁ?」
「あるとしたら新たな婚約者見つける為のお見合いが待ってますから悟様の心労は増えるかと思いますが…」
「待て待て!お前さ俺がお前を婚約者に選んだ理由分かってない?」
「偶々やった来たのが分家の分家で大人しく言うこと聞ける丁度良い存在だから…でしょうか?」
今まで思っていた事を言えば悟様は膝の上に肘を付いて頭を手のひらに乗せて大きなため息を吐いた。
「いや…あー、傑と硝子が言ってた通りだった」
「はい?」
悟様は「あー」とか「くそぉ」とボヤいてからサングラスを取って私を見て…
「俺さお前に婚約者宣言したその前にお前の事見かけて一目惚れして、それで俺家の連中にワガママ言ってお前を婚約者にしたんだよ!」
婚約者になって12年、まさかの告白…しかも一目惚れしてワガママ言って私を婚約者にした?私は夢を見てたようだ。
「傑達に言われたんだよ、俺お前に好きとか何も言ってなかったしそれで勘違いされてんじゃねぇのとか…そう思ってなかったんだけど思ってたのかよ…」
「はい…その…鈍くて申し訳ございません…」
「いや、俺が悪い…」
悟様が反省してる…私は信じられない光景を今日だけで何度見たらいいのだろうか?
「俺、お前が好きだ!他の誰にも取られたくねぇし本当は術師辞めて欲しい!ずっと俺と居てくれ!」
精一杯の言葉なんだろう、顔を真っ赤にして言う悟様…これは私の負けだ。
「悟様」
「ん…」
「私はずっと悟様に相応しくないお飾りの婚約者だと思い自分にも言い聞かせてきました」
「お前じゃなきゃ嫌だ」
「はい、本日その言葉を悟様本人から聞きまして私は嬉しいです…不束者ですがこれからもよろしくお願いいたします」
ベッドの上でお辞儀すると悟様は私を抱きしめて
「当たり前だろ!!」
「っていうのが僕と彼女がラブラブ夫婦になるキッカケになったお話し〜」
「先生って大事な事言わないタイプだったんだ」
「まぁねぇ〜、彼女に言われて傑ともちゃんと話し合え言われてそれで話せば結構アイツ抱えてて、それを分かち合えたから彼女には本当に感謝だよ」
「なら大事にしなさいよ」
「分かってるって!」
「釘崎、大事にしすぎてこの人奥さんを卒業前に妊娠させて事実上術師引退させたんだぞ」
「「怖っ!」」
「既成事実は大切だよ、おっと愛する彼女から電話だ!」
終わり