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    meepoJlo

    @meepoJlo

    呪術の狗🍙棘 夢小説をこそこそ書いています。

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    meepoJlo

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    くすり夢を見た気がする。
    大好きな人と手を繋いで歩く夢。
    温かくて、嬉しくて、ふわふわと。
    その手は何処へ行ってしまったのだろう、

    と。




    目を開くと、ぼんやりと茶色い木の天井が見える。辺りは陽が落ちてもう薄暗い。閉じた記憶はないけれど、カーテンがきちんと閉められていた。
    どのくらい眠っていたんだろう…。

    今日は朝から熱があって。
    学校を休んで、家入さんに薬をもらって一日眠っていた。夕方頃には熱も下がって少し身体が楽になっていたけれど。薬の効果かまだ本調子ではないのか、また眠ってしまっていた。
    まだ頭が鈍くぼんやりしているのは寝起きだからなのだろうか。

    隣からは微かに息遣いがあって。
    唯のその手は温かい人の手に包まれて固定されていた。

    ………?


    ぱっちりと目が覚める。
    薄暗い室内。ハッキリとした意識の中で首を動かしてそちらを見れば、唯が身体を横たえるベッドの横に座り、へりに突っ伏して頭を預ける棘が眠っていた。ネッグウォーマーが少しズレて、呪印の端が見えている。その手には唯の片手がしっかりと握られていた。


    …お見舞いに来てくれたんだっけ。

    そのまま唯は眠ってしまった。棘が手を握っていてくれたから、気持ち良くて。安心して眠れた。
    幼い頃に、母にしてもらったそれと似ていたから。

    枕元には棘が持ってきてくれたスポーツ飲料、ローテーブルにはコンビニの袋に入ったゼリーが手付かずで置かれている。



    握られた手をそのままに、唯は棘の方に身体ごと向き直ると、目の前には静かに寝息を立てる彼がいた。

    棘の長い睫毛は閉じられた瞳に影を作る。
    白い肌は先天的なものなのか、とても綺麗で。
    サラサラした髪はベッドに落ちて、頬にも掛かる。1年生の時の短髪も似合っていたけど。

    唯は思わず手を伸ばした。

    その髪に触れて、頬に掛かった髪をかき上げる。
    触れた髪は想像通り柔らかくて、耳に掛けるようにそっと置いたけれど、半分くらい落ちて揺れた。
    瞳を閉じた棘の眉間に皺が寄る。頭が動いて、棘の顔はベッドに埋まった。唯の手を握ったままの棘の片手に力が入る。

    「………ん、」

    くぐもった声が小さく聞こえた。
    そこでピタリと動きが止まり、棘は勢い良く顔を上げた。

    「ツナマヨ?!」

    大きな目を見開いて動揺する紫の瞳と目が合う。

    「…ぁ、おはよう」

    「こんぶ…?」
    「うん。割と元気だよ」

    唯はまだ少し気怠さの残る身体を起こした。笑い掛けると、棘も唯に笑顔を見せた。
    その手はずっと握られたままでいる。

    「たかなぁ…」

    眠ってしまったと、棘はまたベッドに頭を埋めた。ちらりと目線だけが唯を見る。

    「部屋に戻らなかったんだね」
    「しゃけ」

    唯はその髪に手を伸ばした。先まで触れていた頭にまた触れると、棘は静かに目を閉じる。

    「ありがとう」

    目を閉じたままツナ、と静かに答える棘。撫でられて喜ぶ子犬のようだ。唯も自然と笑みが溢れる。
    その頭を何度か撫でてから手を離す。片側の繋がれた手も、するり滑り棘から離れた。

    電気を、と思い起こした身体を動かせば、今離したばかりの棘の片手がもう一度伸ばされて唯の手に触れ、繋がれた。

    「こんぶ、高菜?」

    「棘…?」

    唯は振り返り棘を見る。
    棘は身体を起こして膝を突き、反対側の手を伸ばした。それは唯の前髪をかき上げて。
    ゆっくりと棘の顔が近付き、額と額がこつんとくっつく。

    「………っ」

    唯はぎゅっと目を瞑った。
    心臓が早くなる。顔も熱が昇り熱くなっていく。

    しばらくそのままで、棘も唯も動かない。
    唯が恐る恐る目を開くと、触れていた額が少しだけ離れて行った。

    「ツナ」

    掠れた声で告げる棘。その手は唯の頬に回り、触れる。かさつく親指が、唯の唇を撫でた。眉をひそめて困ったような熱のあるその表情に。
    薄暗い中で見えた棘の顔に、唯は見覚えがあった。

    「……ぁ」

    唯は息を呑む。思わず漏れてしまった声に、心臓がまた早くなった。目を逸らして俯く唯に、棘はネッグウォーマーの中で薄く笑ったが、唯は気付かない。

    「…いくら」

    手を離し、棘は立ち上がる。
    電気のスイッチがある出入り口に向かい、部屋が明るくなった。

    唯は真っ赤になった自分の頬を両手で包む。きっともう、熱はない…はずなのに。心臓がどきどきと早鐘を打っている。言葉が出ない。

    「ツナ〜」

    呼ばれて顔を上げると、棘はコンビニの袋からゼリーを2つ取り出した。ぶどうとオレンジ味。
    何も無かったように、棘は笑って差し出した。

    「いくら?明太子?」

    「え?じゃあ…、ぶどう」

    「しゃけ」

    ローテーブルにぶどうのゼリーとプラスチックのスプーン、枕元にあったスポーツ飲料のペットボトルを置いた。ちゃっかり自分も座ってオレンジのゼリーを用意している。

    「…夕飯、いいの?」
    「しゃけ〜」

    後でいいらしい。唯もベッドから降りて床に座り、ゼリーをもらう。

    「いただきます」

    食欲もあまりないので丁度いい。
    甘い。

    「…ありがとう」

    笑った唯の頭に棘は掌を乗せた。少し複雑そうに目を伏せる。

    「高菜」

    ごめん、と言われた気がした。
    唯は首を横に振る。居た堪れなくなり、唯も俯いた。

    こんなに近くに居るのに。これ以上触れられない事がやっぱり寂しい。

    ゼリーを一口、口に運ぶ。やっぱり甘い。
    俯く唯の頭を、棘はそっと撫でる。髪をすくように、優しく触れた。

    「いくら?」
    「明日?うーん。明日は学校行けそうかな」
    「しゃけ!」

    棘の身体が近付く。
    唯の腕に自分の腕が付くか付かないかの距離で座り直した。

    「ツナ」

    覗き込まれたその顔は、いつも通りの棘だった。

    紫色の瞳と目が合うと。

    触れていたいのも、たぶん同じ気持ちなんだと…。
    その一言でなんとなく伝わる。

    唯は真っ赤になる顔を伏せて、手元のスプーンを見た。スプーンをくるくる回して弄び、ちらりと棘を見る。こちらを見ていたらしい棘と目が合って、やっぱり唯は目を逸らした。
    小さなスプーンを両手で握る。
    棘の肩にもたれ掛かって、微かに重い頭を乗せた。瞳を閉じる。




    「もう少しだけそばに居て欲しい、です」

    「ツナマヨ」


    たぶん、棘は笑っている。
    しゃけじゃないんだなぁ、と思った。






    End***










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