不安学校で言う所の保健室だろうか。
と、ぼんやり中学を思い出す。
でもそこは、保健室と言うより医務室で、保健の先生ではなくて専門の医師が立ち会う。家入さんは不在だった。見覚えのある顔の女性が対応してくれた。
「ありがとうございます」
綺麗に腕に巻かれた包帯を見てから、頭を下げる。
「先生たちに報告してくるね。少し休んで、今日はこのまま寮に戻りなさい」
「はーい」
唯は笑顔でもう一度頭を下げ、その人は静かに部屋を出て行った。
何度かお世話になった事のある医務室。
唯は自分の腕を見て、グーパーと指を動かす。まだ少し腕が痛んだ。傷が残りそうだ。
医師と入れ替わるようにバタバタと足音が聞こえて、勢い良く扉が開く。
「こんぶ?!」
と声を張り上げて唯を見るその人は、息を切らていた。
「棘?」
走って来てくれたのだろうか。
「こんぶ?」
棘は肩で息をしながら、唯に近づく。
「大丈夫。ちょっと転んだだけだよ。着地に失敗して木にぶつかっちゃった」
バカだよね、と笑って腕の包帯を棘に見せた。
「ごめんね、心配かけて」
顔を上げて見ると。
その顔は、
今にも泣きそうで。
「ごめん…」
もう一度呟けば、その瞬間に身体が包み込まれた。
ふわりと香る、彼の匂いに。
何だかすごく安心感が広がる。
ぎゅっと、苦しいくらいに、抱きしめられて。
その不安が嫌と言う程伝わってくる。
「高菜」
掠れた声が耳元で小さく響く。
怪我をするなんてよくある事だけど。
棘が任務に出る時は、いつも何処かに不安があった。
きっと何も言わないけれど、気持ちは同じなのだと、思う。
しばらく棘はそのまま動かなかった。
唯も静かに目を閉じる。
お互いの存在を、確かめ合うように。
「ただいま、棘」
「ツナマヨ」
End***