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    meepoJlo

    @meepoJlo

    呪術の狗🍙棘 夢小説をこそこそ書いています。

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    側にいるだけ陽が沈んで、夕方のオレンジは夜の闇に呑まれていった。ひとつ、ふたつと星が輝き出す。


    珍しく何もない日曜日だった。
    昼食の後に、唯がお出掛けしたいと狗巻先輩を誘って、何とはなしに電車に乗って出掛けた。特に用事がある訳でもないけれど。服や雑貨を見て買い物をしたり、お茶をしたり、よくある普通のデートを楽しんだ。
    握り締めた紙袋には、桜色のワンピース。迷っていた唯に、狗巻先輩が選んでくれたものだった。

    電車を降りたのは高専に近い小さな最寄り駅。
    段差で振り向く狗巻先輩は、お洒落な私服に黒のマスクで口元を隠している。街中を歩く時、振り返る女性が居た事をたぶん唯だけが知っていた。
    ツナ、と唯を見て伸ばされた先輩の手。躊躇いがちにその手を取れば、包み込むように握られた狗巻先輩の手はやっぱり温かい。


    ほんの少し会話をしながら2人で並んで歩く。東京だと言うのに人通りも車の通行も少ない道だった。街灯がぽつりぽつりと夜道を照らす。

    後1つ信号を越えて、角を曲がって山道を登れば高専が見える。
    明日は朝一から任務が入ったと、電車に乗る前に唯のスマホに連絡が来た。授業に任務に実技の実地訓練。朝練や昼練、夕練も少なくはない、普通とは少し違う生活。

    先輩と過ごす休日も、後少しで終わってしまう。
    来週もまた、2人きりで過ごせる保証はどこにもない。

    唯は静かに立ち止まった。それに気付いた狗巻先輩も、踏み出した一歩を止める。

    「ツナ」

    唯は立ち止まったまま、先輩の手をぎゅっと握った。

    「こんぶ?」

    狗巻先輩は動かない唯を振り返り、心配そうに顔を覗く。

    「ツナツナ?」

    唯はそのまま静かに俯いた。

    「…帰りたく、ない…です…」

    高専に戻ったら、楽しい時間はもう終わり。

    明日の朝一で唯に任務が入った事も、狗巻先輩は知っていた。このまま食堂で夕飯を一緒に食べて、おやすみと告げて。きっと、いつもより早めにそれぞれの部屋に戻る。

    そして明日からはまた、いつもの忙しい日常。
    ーー次はいつ、こんなにゆっくりと時間が取れるんだろう。

    俯いた目元が微かに滲む。



    狗巻先輩は唯の言葉に僅かに目を見開く。

    「高菜」

    小さく返す声が聞こえた。

    「おかか」

    言って頭にぽんと置かれた、狗巻先輩の掌。幼い子どもをあやすように、ぽんぽんと撫でて触れる。
    こんなのはただのわがままだと、唯にもわかっていた。言った所で明日の任務も何も変わらない。

    先輩は優しいから、そんな唯に「しゃけ」とは言わない事も知っている。
    困らせたい訳ではないけれど。

    唯は握った手を解いて離した。

    「なんちゃって。嘘です、嘘!先輩が困った所を見てみたかっただけです」

    顔を上げて、狗巻先輩を見た。勤めて笑顔を向ける。

    「お腹空いちゃいました。早く帰って、食堂行きましょう。今日は早く寝て、明日に備えますね」

    見上げた狗巻先輩は、目を瞬かせて唯を見た。笑顔もなくただ困ったように、おかかと唯に告げた。
    聞こえないフリをして、唯は1歩前に出る。こっそりと袖で涙を拭って歩き出した。
    「先輩、何食べます?」と、適当に話題を変え、「お腹減ったし、私はガッツリ食べたいです」笑いながら、歩を進める。
    そんな唯に、小さく漏らす溜息が聞こえた。

    「おーかーか!」

    瞬時にするりと伸びた狗巻先輩の腕は、唯の首筋を掠めて行く。髪を巻き込んで、背中からぎゅっと唯を抱き締めるように捕まえた。

    「おかか」

    肩口から覗き込まれた狗巻先輩の目は、少しだけムッとして不機嫌そうに唯を見た。振り返る唯の目尻に、先輩の親指が触れて。かさついた指先が、今にも溢れそうな滴をゆっくりとなぞって掬った。

    「こんぶ」

    その手は唯の髪に触れ、そっと優しく撫でていく。黒のマスク越しに、キスをするように唯の柔らかな頬に顔を寄せた。

    「狗巻先輩…?」

    マスク越しに感じる狗巻先輩の息に、ふわりと香る先輩の匂いに。ドキドキと胸が鳴る。

    「あの…すみません。わがまま言って。本当に、大丈夫です」

    言って目を逸らすけれど。

    「いくら、明太子」

    あと少し、もうちょっと。
    目を細め、笑った狗巻先輩は唯の手をもう一度握る。指を差して引っ張ったのは、高専とは別方向の道だった。

    「ツナツナ」



    手を引かれて、本当にほんの僅か夜道をお散歩して。

    夜空に星が満点に輝く頃にはコンビニに立ち寄り、また来た道を引き返して高専に戻る。

    「ツナ」

    狗巻先輩はコンビニでプリンを2つ手に取って唯に見せた。紫がかった瞳が、微かに笑う。


    「ツナマヨ」

    “ 後で一緒に食べよっか ”











    End***



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