日下部さんに起こしてもらう話 肩を強く揺すられ何度も名前を呼ばれている気配に意識が浮上し始める。徐々に意識と身体感覚が結びつき、目をうっすらと開けると意外な人物が私を覗き込んでいた。
「――やっと起きたか」
「日下部、さん……?」
身を起こすと日下部さんに抱きかかえられていたようで、私は状況が分からず混乱する。
「怪我はないか?」
問われるままに自分の身体を見回した。怪我はない。更に辺りに視線を漂わせた。ガランとした空間だ。断熱材や配線が剥き出しの内壁に、部屋の片隅には手付かずの資材が積み上げられている。そうだ、私は。
「任務が終わってから寝ちゃったんだ」
寝ぼけた頭が徐々に動き出し、意識が途切れる直前の記憶を取り戻す。建築途中のビル内に発生した呪霊の祓除任務にあたっていたのだった。
1897