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    kaibaseto1025

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    驍阿。

    ##戴

     驍宗と寝た。
     文字通り、寝たのだ。同衾した。
     軍に身を置いていて、一度も男同士のそういった話を聞いていないとは言わない。自分が一兵卒だった時にそういう話を聞いたことがあったから。遠い昔の話だが。上官が下官を、という話も、同僚同士で、という話も、どちらも聞いた。だが聞いただけだった。両者合意の上であれば否定はしなかったし、自分の立場が上になり、当事者である下官から聞いても合意であるなら問題とはしなかった。下官が上官に言うということは大抵が合意ではなかったから、そういった輩はしっかり粛清したけれど。そもそも阿選麾下、規律が整っていた。だから、他の隊よりそういった厄介ごとは少なかったように思う。それが今、まさか自分が当事者になるとは思ってもいなかった。お互い禁軍将軍という位で、だ。
     閨事に位は関係ないかもしれないが、お互い将軍職、麾下に知られた場合の影響は計り知れない。下世話な人間はどこにでもいるし、得てしてそういう輩はおそろしく口が軽い上にあることないことを吹聴する。その者たちに知られたら。
    「後悔しているのか」
     私と寝たことを。
     驍宗が寝台に横たわったままの阿選の髪をさらりと撫でる。阿選が身を起こさないのは昨夜無理をさせたからだと思っているからだろうか。阿選に触れる手は優しく、阿選を労っているかのようだった。
     後悔。阿選は考え、ふるりと首を振った。驍宗とこうなったことを後悔はしていない。だが。
    「私とお前は今まで通りだ。なにも変わらない」
     一度寝たからとて恋人のようになるでもなく、今後もし今回のように寝ることがあったとしても変わらない関係で、と阿選は告げた。
     驍宗はそのほうがお互い軍人として切磋琢磨していけるからこその提案だと思っただろうが、阿選の考えは違った。もちろん馴れ合うよりも少し距離を置いてお互いを高め合う間柄でいることに異議はない。けれど親しくすることで、今までより親密になった二人の関係を下世話な人間に邪推されたくなかったし——驍宗とまぐわったのは紛れもない事実だから邪推でもなんでもないのだが——宮中で二人に関係する卑しい噂話が流れるなんてことにはなりたくなかった。おそらくそんな話が届いてきたら自分は憤死するだろう。どのつら下げて宮城を歩けばいいのか。そうならないためにも、今までの関係を変えてはならない。
     阿選は息を吐いた。からだがつらいと思ったのか驍宗は阿選を気遣うが、そうではない。頬を撫でられ、その手にすり寄る。甘えた風を装うけれど。
     この胸の内に巣食う複雑な感情を、知られるわけにはいかなかった。
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