忘羨ワンドロワンライ【全力疾走】【にせもの】「納得いかない!」
雲深不知処には似つかわしくない大声に、周囲から『しぃー!」と諌めるような声がかかる。思わず周囲を見回し、藍景儀は唇を尖らす。
「だってそうだろう? 確かに偽物が混じってるっては言ってたけど、見つけた玉が全部、全員分が偽物だなんて、そんなの絶対おかしいだろ?」
周囲の数名が同意して深く頷く。藍景儀は唇を尖らせたまま腕を組み直した。
「元々、全部偽物だったなんてことないよな」
藍思追は首を横に振る。
「それはないよ。最初に本物が人数分あることをみんなの前で確認してからばら撒かれたんだよ? それに――」
藍思追は言い淀んだが、周囲の門弟から突かれて促されると、小さく息を吸い込んでから言葉を続けた。
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