Relinquish Neonリリンクィッシュ ネオン
綱視点
はじめ20歳の誕生日を迎えて数日後
誕生日プレゼントは別で先に渡したが、飲酒が解禁されたため少し特別に豪華な場所で(飲酒初心者向けの店)出来ていなかった祝いも兼ねて飲みに行くことにした
ちゃんと20歳になるまで飲酒はしてこなかったよな?
綱さんに幻滅されたくないんでちゃんと守ってましたぁ♡
へらっと普段他人に良くする人当たりのいい笑みではない、にへらぁとしたようなだらしない笑みの前に鼻をつまんでやりたくなる綱
だが我慢した
誕生日だから
だらしない顔はしまっておけ
そんな顔してないですし、仮にしていたとしても綱さんの前だけですよ
一瞬止まってはじめを見るが既にメニュー見だしていたためそちらを見た事に気付かれなかった
最初ってどんなお酒がいいですか?とサラッと問われてついぞ先程の言葉には言及することは出来なかった
まだアルコールも入れてない綱の頬に熱が集まる
そうして初めてのアルコールを程よく体に収めたはじめはふわふわした足取りを心配された綱によって頃合いに自宅に帰らされた
元々泊まるつもりだったのでそのまま世話を焼く
手を洗いうがいをしてリビングに入った途端、あーーーという奇声を上げてはじめはソファに身を沈めた
⋯はじめ、ソファで横になっていないでシャワーに入れ
⋯んぇー?つなさんいっしょにはいろー?
やれやれ、酔っ払いの相手は骨が折れる
ソファまで近付き腕を広げて胸の中に飛び込んでくる待ちをしている酔っ払いの体を腕ごと掴み上に引き上げる
のわぁ!
さっさと入ってこい、さもなければ服のまま風呂場にぶち込むぞ
こわぁ
やたらとケラケラと笑うはじめにもしや笑い上戸なのか?と思いながら風呂場まで連行する
服を脱いでもなお一緒に入ろうとしつこいはじめのケツを蹴り風呂場にぶち込む
手荒に入浴まで進めたが無事に上がり終わるまでプラスチックで隔てられた扉の前で出てくるのを待った(すっ転んでたりしたら怖いから)
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ふと瞼が開いた
どうやらあの風呂の後は、布団の中でゆったりと話しながらお互いの熱を分け合っていたら眠ってしまっていたようだ(ただ布団で温かいね~とくっついていただけ)
(はじめの心臓の音が聞こえる)
空気は冷たいが身体が温かいのははじめの胸に抱き留められて寝ていたためだった
窓の辺りを見てもほとんど差し込んでくる光もなく、たまに車のヘッドライトがカーテンの隙間から右から左へと抜けていくだけだった
確認する術はないが、おそらく夜明けに近いがまだ日は昇らない時間帯なのだろう⋯
まわりの風景も輪郭だけで何となく捉えられる程度に暗かった
綱は徐ろに気だるい腕を上方に上げ、はじめの顔とおぼしき場所へ手を伸ばす
するとちょうどはじめの頬の部分に当たった
(冷えてる⋯)
温めるようにその頬を手で包むと心地よかったのか擦り寄るように顔を寄せられた
はじめの胸元から出て逆にその顔を胸元に収めてやれば温かさに惹かれたのかそのまま背に手を回して自ら居心地のいい場所へ収まっていった
(⋯かわいいな)
目を細めるように笑みをこぼす綱
温めてやるはずが逆に温められている心地だ
だが⋯
(愛おしくなればなるほど逆に心が曇っていくようだ⋯)
どうやっても消えない『はじめの未来を奪っている』という現実が確実に陰りを強める
(あと何日一緒にいられるか⋯)
(大丈夫だ、普通にできる)
(なんともない、別に、前のように戻るだけだ)
まるで自身に保険をかけるように何度も心の中で言い訳がましい言葉を無意識に述べていく
その際意識せずぎゅっと抱きしめた胸元の存在が小さく声を上げた
愛恋を暁闇に落とすまであと──日
綱もはじめのことかわいいって思う時あるんだよ
不穏そうだけどこのままスペクタクルネオンに続くよ
スペクタクルネオン=綱のはじめへの愛恋の気持ち
Relinquish→手放す、返上する