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    _reki_212

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    さねみの柱就任直後はさねみのこと声大きいし言葉荒いし態度も悪いし初対面の御館様にアレだしで正直何なんだあいつ…みたいに思って苦手だったぎゆうが、色々あってさねみと友達になりたいな、と思うまでのお話。

    #さねぎゆ

    仔猫になってしまった義勇を実弥が拾うさねぎゆ小ネタある日ぎゆうは人を動物に変える血鬼術を使う鬼と交戦し、首を斬ったもののギリギリのところで術を掛けられ、黒い仔猫に変えられてしまう。戦闘中にあちこちに負ったかすり傷が小さな体には深く大きく、天候も悪化して、ぎゆうは森の中で行き倒れる。
    援軍にやってきていたさねみがたまたま仔猫のぎゆうを見つけ、拾って帰る。ぎゆうは最初、さねみを拒絶した。ただでさえ苦手な男だし、仔猫の目線だとさねみが熊より大きな生き物に見えて恐ろしかった。早く自分の家に帰ろう、落としてきた刀と羽織を探しに行こうと思って脱走を試みたりした。けれど弱った仔猫の体では柱の広い屋敷を出ることも叶わず、すぐにへばって倒れてしまう。何処へも逃げられず、ぎゆうはさねみの屋敷で過ごすしかなかった。
    自分に触られることを嫌がり、何度も逃げようとする仔猫を、さねみは意外なほど根気強く世話し続けた。傷に薬を塗ったり、包帯を巻いたり、温めたミルクを手ずから飲ませてくれたり、木箱に綿や布を詰めて柔らかい寝床を作ってくれたりもした。優しい顔で笑い、優しい声をかけ、優しい手付きで毛並みを整えてくれる。そうして数日面倒を見てもらい、義勇はようやく部屋の中を駆け回れるくらいに回復した。
    回復したとはいえ、まだ長く運動はできず、自分で餌を獲ることもできないぎゆうは、もうしばらくさねみの世話になりながら血鬼術を解くことにした。早く元の姿に戻れるように、日が出ている間はずっと陽光を浴びる。猫らしく気ままな(ように見える)ぎゆうを、さねみは相変わらず優しく甘やかした。薬の代わりにならないかと思って裏庭に咲いていた藤の花をぎゆうが齧ったときだけ酷く叱られたけれど、屋敷を駆け回って物を倒したり、柱で爪研ぎをしたり、うっかりさねみを引っ掻いたり噛み付いたりしても、さねみは全く怒らなかった。屋敷にいるときのさねみは、今までぎゆうが思っていた人物像とはまるで違った。屋敷でのさねみはとても静かで、世話役の隠が来ても聞かれたことに一言二言返すだけでほとんど喋らない。仔猫のぎゆうに話し掛ける言葉はいつも通り乱雑ではあるけれど、声音は柔らかくて優しい。ぎゆうの世話をする以外は道場か庭で鍛錬をして、日が傾き始める頃には隊服を身に纏って鬼狩りに出掛け、日が昇りきった頃にようやく帰ってくる。休息と強い身体を作るために食事と睡眠は欠かすことなく、昼夜逆転以外は健康的な生活と言えた。
    世話役の隠はあまりぎゆうの傍に寄って来なかったけれど、不死川の帰還が遅れた日や早くに出発する日は、隠が食事の用意をしてくれた。その隠が言うことには、知らない環境で怯える仔猫に余計なストレスを与えないよう、ぎゆうとの接触を控えるようにとさねみが命じているらしい。思い返せばさねみも、ぎゆうの手当てと食事と、脱走を試みて途中で行き倒れたときや庭先で野良犬と遭遇して固まったときなどのぎゆうが困っているときにしか構ってこなかった。隠は、ぎゆうが食べやすいように魚の身を解しながら、以前のさねみは昼でも索敵や見回りに出掛けてお屋敷で休まれることは少なかったのに、ぎゆうを拾ってからは毎日必ずお戻りになられるようになったと言った。確かに、ぎゆうが元気になるにつれて外出時間が長くなってはいるけれど、さねみは毎日必ず帰ってきて、どんなに短い時間でもぎゆうの様子を見にくる。大事にされてるな、と隠に笑いかけられて、ぎゆうは、本当にそうだろうか、そうだといいな、と胸の内で思った。ぎゆうはもう、以前のようにさねみを苦手だとは思わなかった。むしろ、真面目で思慮深く、仕事熱心で、女子供や動物に優しいさねみのことを好ましいとすら思った。さねみともっと仲良くなりたくて、さねみに構ってほしくなって、ぎゆうはその日、初めて自分からさねみの膝に乗り、優しく撫でてくれる手をぺろりと舐めた。

    数日が経ち、ぎゆうが庭を飛び跳ねても行き倒れなくなると、さねみが屋敷で過ごす時間は目に見えて減った。食事は毎食隠が用意してくれて、さねみの手で食べさせてもらうことはなくなった。庭で泥まみれになっても、ぎゆうを水洗いするのは隠だ。さねみがぎゆうに触れるのは、夕方出掛ける前と翌朝帰ってきたときくらいになってしまった。
    忙しいのだと、隠は言う。柱はただでさえ忙しいのに、水柱が失踪してさねみや他の柱に皺寄せがいっているらしい。ぎゆうが仔猫になってからもう少しで1ヶ月になる。仔猫がぎゆうであることにはさねみも隠も気づいておらず、その間水柱は当然行方不明だ。しかもさねみは、水柱が抜けたことで増えた鬼殺や警邏の他に、水柱の捜索まで行っているという。今まで仔猫のぎゆうの世話に当てていた時間を、水柱を探すために使っているのだ。
    水柱の姿が消えてから3週間以上が経過し、捜索隊は正直に言って諦め始めていた。だがさねみだけは諦めようとせず、毎日町での聞き込みをしたり、水柱が最後に出向いた任務地近辺を探し歩いている。「お館様も希望はあると仰ったし、とみおかは必ず生きている」とさねみは言ったそうだ。ぽつぽつと語る隠を見て、ぎゆうは、『このままではいけない』と強く思った。日光浴は欠かしていなかったけれど、ここ数日のぎゆうは、明らかに猫としての生活に順応仕掛けていた。人に戻ろうという意識が薄れていた。このままでは本当に身も心も全て猫になってしまう。急いで人間に戻らなければ。ぎゆうがいなければ他の柱の仕事が増えるし、お館様に心配をかけている。さねみにも、迷惑をかけている。人間に戻らなければこのままずっと増えた仕事や捜索で手間を取らせるし、仔猫のぎゆうの世話までさせている。これ以上さねみに一方的に世話をさせるのは嫌だ。
    ぎゆうを助けてくれたこと、生きていると信じてくれたこと、にゃあと鳴き声を漏らすのではなく、ちゃんと言葉でお礼を言いたかった。膝の上に抱き上げられるのではなく、隣に座ってみたいと思った。『おい』や『お前』と呼ばれるんじゃなくて、ぎゆうをぎゆうとして見てほしかった。さねみに負けないくらい鍛錬して強くなって、さねみと肩を並べて戦えるようになりたかった。
    ーー人間に戻ろう、戻りたい。このままずっとここには居られない。ぎゆうは剣士だ。鬼殺隊に身を置く鬼狩りだ。さねみのように身体を鍛え、さねみのように巡回に出て、さねみのように戦わなければならないのだ。ぎゆうは改めて決意を強くする。暮れていく陽の光を睨みながら、ぎゆうは、どうして何日も刀を握らずにいられたのだろうかと自問した。

    その日の晩、誰もいない風柱邸で、ぎゆうは突然人間の姿に戻った。夜の帳が降りてすぐのことだ。何故戻れたのかは分からない。さねみは既に警邏に出ていて、世話役の隠もちょうどいなかった。
    ぎゆうは全裸だったので、さねみの襦袢を1着拝借して、裸足のまま夜道をかけて自分の家へ戻った。出迎えた留守居番の隠に泣きつかれながら己の隊服に着替え、誰かが回収してくれていたらしい刀を掴んで家を飛び出す。走って、走って、ぎゆうの担当区域で鬼と戦うさねみの背中を見つける。さねみが鬼の気を引いているうちに背後へ回り、一息に鬼の首を撥ねた。
    急に現れたぎゆうを見て、さねみは酷く驚いていた。しかしすぐに我に返り、血振りをするぎゆうに掴みかかった。
    「テメェ、今まで何処行ってやがった!」
    ずっとお前の傍にいた、助けてくれてありがとう、そう言おうとぎゆうは口を開いたが、どれだけ喉を震わせてもひゅうひゅうと空気が漏れるばかりで、声はちっとも出て来ない。それどころかぎゆうはぐわん、と目が回って、足に力が入らなくなった。さねみの焦ったような声が聞こえたのを最後に、ぎゆうはぷっつりと意識を失った。

    1ヶ月近く仔猫になっていた後遺症か、ぎゆうの身体はかなり衰弱していた。栄養が足りず、ろくな運動もできなかったので全身の筋肉が凝り固まり、衰えていた。ぎゆうはしばらく入院することになり、まともに声を出せるようになったのは1週間後のことだった。
    お館様と、治療をしてくれたカナエとしのぶには詳しい事情を打ち明けた。お館様達は仔猫のぎゆうを助けたさねみにも事情を説明しようと言ってくれたが、ぎゆうはどうしても自分で礼を言いたいのだと、その申し出を断った。それからぎゆうは何度となくさねみに会いに行く機会を探っていたけれど、多忙なさねみはなかなか捕まらず、会えてもいつの間にか喧嘩に発展してしまって、礼どころか世間話さえできない始末だった。
    お礼も真実も伝えられないまま、何年もの時間が過ぎた。今日もぎゆうの発言のどこかに引っかかって、さねみは大きな怒鳴り声を上げる。荒っぽい言葉遣いと態度は相変わらずで、昔はそこが苦手だったけれど、今のぎゆうはさねみに怒鳴られても恐ろしいだとか疎ましいとは思わない。さねみはいいやつだ。立派な男だ。さねみが誰よりも真面目な男であること、粗野な言動の裏に確かな優しさを持っていること、懐に入れた相手に見せる笑顔や情の深さを、もうぎゆうは知っている。あのとき仔猫のぎゆうにしてくれたように、穏やかな時間を2人で過ごしてみたい。できることなら今度はちゃんと人間として、とみおかぎゆうとして、さねみと友達になれたらいいな。上手く言葉に表すことは難しくて、さねみを怒らせてばかりだけれど、ぎゆうはいつも心の底で、ささやかにそう願っている。
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