375 瞬いた目に映ったのは、真っ白な部屋。
調度の一つもなく、殺風景この上ない。
「なんだい、この部屋は。
風流じゃないね」
見回せば、歳の頃は七つほどか、緋色の振袖を肩上げもせず、さらりと着た幼子が、この部屋で唯一の調度のように動かず、じっと彼を見つめていた。
「ごきげんよう、童女殿。
貴殿が僕の主かな?」
跪いて目線を合わせると、彼女はこくりと頷く。
と、肩の上で切り揃えた、癖のない黒髪がさらりと流れた。
一筋の乱れもないそれを訝しく思いつつ、彼は微笑む。
「そうか。
僕は歌仙兼定。
風流を愛する文系名刀さ。どうぞよろしく」
「・・・よろしく」
囁くような声に確信し、歌仙は微笑んだまま、目に剣呑な光を点した。
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