存在証明とアノマリー「ティーチくんはばななが好きなんだね!ボクいち…かきがすきなんだ!!」
「かき…おいしいよね」
「ティーチくんも好き?一緒だね!!おそろい嬉しいな…」
白の空間に響く楽しげな声。コバヤシはしばらく影でそれを聞いたあと、くるりと背を向け歩き出した。
白の世界から少し離れればそこは1寸先も見えぬほどの暗闇。白の光でかろうじて自身の腕が見えるくらい。ティーチやサムはこの闇を嫌ったが、コバヤシは好んでいた。…この暗闇では白の世界では異質な己の汚れた黒を忘れ、溶け込むことが出来るような気がしたのだ。
「…仲がよろしくて喜ばしいこった」
暗黒の中、先程のティーチとサムの様子を思い浮かべ、独りごちる。サムはティーチの人格のひとりであり、ティーチに自分を認識してもらうことを夢見て努力を続けていた。字を覚え、ティーチと文通によって繋がり、それでは飽き足らずとうとう「体の分離」という型破りな方法を見つけ出した。この方法でティーチの人格のひとりであったサムは晴れて独立した存在となったのだ。…それは、もうひとつの人格であったコバヤシも例外ではなく。
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