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    絵の置き場 雑多
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    眠れないので、メモから発掘したアズ監♀ss
    ※話が暗いです

    貴方は正しく慈悲の人魚なのだろう。時に人の痛みなど知らないように振る舞うが、それは痛みを知っているからこそ成せるわざなのだ、と私は考える。

    恋人という関係になってから貴方の腕の中に招かれる度に酷い罪悪感に苛まれる。この柔らかに包み込むような抱擁は元の世界を諦められない私への、同情や慰めからくる慈悲の形なのだろうか。ゆらりと胸に頭を預けてぬるま湯の様な体温に浸るその間も、この温もりから望郷の念に駆られ、目を閉じて故郷の空を、人を、思い浮かべてしまう。こんなに近くにいるのに貴方の事を考えない薄情者の私は、体に緩く回された貴方のやさしさに答える権利などあるはずもない。深い海へと沈む前のように静かに息を吸い込み、止める。あぁ、このまま時間が止まってしまえばいいのにと何度願ったことだろうか。

    腕に込められた力が強くなったのを感じた。

    「あなたは契約で縛っても、僕を置いてすり抜けるように消えてしまいそうで恐ろしい」

    「僕とずっと一緒に居ろ」

    その言葉に否定も肯定も出来なかった。返事を待つ彼は擦り寄るように首元へ埋まり、腕の力が巻き付くように更に強くなる。

    「……あなたがどう思っていようとも関係ない、絶対に手放してなるものか」

    あぁ最初からこの世界の住民だったならどれほど良かっただろう。この世界の異物でしかない私は、貴方の愛に答えることもできないのに、独りになるのが何よりも恐ろしいだなんて

    震える手を伸ばし、彼にしがみつく。

    返事をしようと開いた唇は、聞きたくないとでも言うように塞がれた。


    「……寂しさなんて忘れさせてあげますよ」


    彼に身体を揺さぶられながら流した涙は彼の慈悲へか、故郷へか。溶けていく頭ではもう分からない。また今日も夜の闇に全て有耶無耶になっていくのだった。
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