まだまだ見ぬ明日「あっ、結婚式」
休日つぐみと歩いていた時、教会から新郎新婦が出てきたのを見かけた。新婦の真っ白なウエディングドレスがそよ風になびいて眩しく映る。
「素敵……」
目を輝かせてその光景を見ているつぐみ。憧れに満ちた顔はキラキラしていて、思わず胸が高鳴るのを感じた。
「そういえば、お前の将来の夢は花嫁だったな」
「はい、ああいう綺麗なお嫁さんに憧れちゃいます」
ああいった花嫁か……。つい頭に思い描く。綿帽子に白無垢姿のつぐみを妄想したことはあったが、やはり女子はああいったドレスを着たいのだろうか。しかし、つぐみにはもう少し裾が丸く膨らんだものの方が似合うのではないか。上半身も、いやすべてあんなものなのかもしらんが、露出が多すぎるのでは……。
「弦一郎さん?」
声をかけられてハッと我に返る。俺は一体何年先のことを考えているんだ。結婚出来るようになるまで……十年ぐらい先までつぐみといられるとは限らんのに。
「ああ、すまん。なんでもないんだ。もういいのか?」
「はい。カフェ混んじゃうかもしれないから早く行きましょ」
繋いだ手を少しだけ強く握りながらまだ遠い未来のことを脇に置こうとしたが、なかなか上手くいかなかった。
「真田、最近スマホで何調べてるの?」
ぐに、と頬に人差し指を突き刺されてハッと我に返った。幸村はさらにぐにぐにと指先を押しつけてくる。
「呼んでも聞こえないぐらい熱心に何見てるのさ」
「花見の穴場だと前に言っただろう」
「もう六月も後半なのに?」
ぐっと詰まるこちらを捕まえる幼なじみの目。その視線はこちらに吸いつくようだ。
「ま、無理に言わなくてもいいよ。なんとなく方向性は察してるから」
「な……」
形のいい唇がにやりと弧を描く。
「何さ、そんなに動揺しなくてもいいだろ。外れてるかもしれないのに」
ひときわ強く頬を押されて、思わず眉間に皺が寄る。確かに、周りの者の目を引くぐらいスマートフォンで調べ物をする機会は増えたかもしれない。だが何がおかしい? 気になることがあるなら、放置せず調べ確かめるべきだろう。
白いドレスの画像が並ぶ画面を閉じ、俺は幸村の手を掴んで止めた。