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士官学校では、粋がる無法者も少なくはなかった。
容姿端麗、文武両道、勇猛精進、品行方正。そんな四拍子をぴったりと揃え持った鯉登を、良くは思わない人間だっている。
正々堂々と、真っ向から喧嘩を売る者はまだわかりやすかった。向かってくるのなら叩くまで。血気盛んな男子らしい発想だと、鯉登は笑って相手を叩きのめした。
一方で、陰湿な嫌がらせには少々手を焼いた。私物が失くなったと思いきや、翌日には汚れて返ってくる。根も葉もない噂を流されては、それを信じた阿呆がすり寄ってくる。顔も見せず、罵声も発さず、直接的ではない攻撃の方が始末に終えないものだと、鯉登は月島のなだらかな鼻をつつきながら言う。
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