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    おまめさん

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    おまめさん

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    ハッピーバレンタイン!🍫

    ⚠️ハッピーラブラブではありません。
    ⚠️名前の出る🌊の元カノモブがいます。

    #suuki

    🌊🔮バレンタイン 断る隙もなく手渡されたそれは、紛れもなくバレンタインのプレゼントで、丁寧なラッピングを見ると、恐らく手作りの何かだった。何か、というのは、バイトの時間が迫っていて開けられなかったから、の何か、なのだけれどまあそれは今はどうでもよくて。小走りで家に帰り、とりあえず浮奇に見つかるのは良くないという考えでそれをベッドに押し込んで、急いでバイトに向かった。
     バレンタインだから混むというような店ではないので、いつも通り働いて、いつも通り家路につく。いつも通りすぎて、すっかりそのプレゼントと、今日がバレンタインであることは忘れてしまっていたくらいだ。
     鼻歌まじりで鍵穴に鍵を差し込み、ぐるりと回す。解錠音。後ろ手に扉を閉めて、部屋の電気をつけた。
     安い一K。玄関を開けてすぐにキッチンがあって、その向こうに私の寝室がある。つまり、一つ電気をつければある程度部屋全体が見渡せるわけで。
     私のベッドに寝転んでこちらを見ている浮奇も、電気をつければすぐに気付けた。
    「ぎゃ! …う、浮奇…どうしたの? 電気もつけないで」
     そういえばスマホのライトもついていなかった気がする。寝てたのかな? 鍵の音で起きたとか?
     いつもの場所にバッグを引っ掛けて、キッチンで手洗いうがいを済ませる。コートを脱いで浮奇にキスをしようと部屋に入って、ローテーブルに置いてある二つの紙袋に気がついた。今日もらったものと、見覚えのない、恐らく浮奇が持ってきてくれたもの。
    「あ、あー………浮奇?」
    「おかえりダーリン。これは俺へのプレゼント?」
    「いや、えーと」
     美人が怒っている様は迫力がある。身体を起こしてベッドに腰掛けた浮奇が、そこに座れと指で合図する。私は、その場所に正座をして、浮奇を見上げた。
     こういうときに、うまく誤魔化したりできたら、あんなふうにプレゼントをもらうこともなくなるのかもしれない。なんというか、上手にかわす技、みたいな。
    「誰にもらったの」
    「えー…大学の………友達」
    「大学の友達。へえ」
     浮奇は紙袋から一枚のメモを取り出す。
    「『またスハとデートしたいな、ハート、連絡してね、ユナ』ご丁寧に電話番号まで書いてくれてる」
    「あ………」
    「友達とデートするんだ、俺のダーリンは?」
    「う、」
     浮奇の視線が冷たい。こういうときにしてはいけないことは、嘘をつくこと、誤魔化すこと。真実だけを、誇張せずに伝えて、最後に、愛の一言を。
    「浮奇、疑わせるようなことしてごめん。でも、…断じてデートはしてない。その…昔付き合ってたんだけど、別れてからは、しばらく会っていなかったんだよ」
     静かに足を組み替えた浮奇は、黙って私を見下ろしていた。暇を潰すように、元カノの入れたメモをひらひらと弄んでいる。
     私は言葉を繋げながら、浮奇の表情が緩むのを待った。
    「最近になって…その、確かによく姿を見るなと思っていたんだけど、まさか今日こんなプレゼントを持ってこられると思ってなかったの。あまりにも想像してなくて、断る時間もないくらいスッと渡されちゃったから、とりあえず家に持って帰ってきただけ。やましいことは何もしていない。私はいつだって浮奇一筋だよ、信じて」
    「………はぁ」
     浮奇がため息をつく。とりあえず一番大きな山は越えられた、多分。私の言ったことは信じてくれたし、別れようなんて事態にはならないだろう。
     怒りが抜けた浮奇は思案顔でそのメモを見つめた。数秒後、私に手を差し出して、簡潔に「スマホ貸して」と言った。
    「スマホ?」
    「そう、やましいことがないなら貸せるでしょう」
    「うん…いいけど」
     ポケットに入れていたスマホを取り出して、浮奇に手渡す。私のパスコードもしっかり把握している浮奇は、手間取ることなくロック解除して、スマホを操作した。
     しばらくして、呼び出し音が鳴る。浮奇はスマホを耳に当て、目を瞑っていた。
     誰かに電話? 男? 仕返しに私に嫉妬させようとしてる?
     色々な可能性を頭で探ってみたけれど、スマホの向こうから聞こえてきたのは甘ったるい女の声だった。
    『スハ? 電話くれると思ってた、嬉しい! 私、』
    「こんばんは、ユナちゃん。俺、スハの今の彼氏なんだけど」
     喉元にナイフを当てられたような気分だった。せめて声を出さないよう、私は手のひらで口元を覆って、どこか祈るような気持ちで浮奇を見つめた。
     浮奇が電話を終えるまで、私は生きた心地がしなかった。
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