『夏夜、』夏休みの終わり、いつものパークで滑っていた暦とランガ。気づけば日は沈み、辺りは暗くなっていた。
「あーぁ、もう夏休みも終わりかぁ」
「だね」
「俺らほぼ会ってたよな」
「うん。色んな所行ったよね」
「S行ってバイト行って」
「買い物行ったりお祭りも行った」
「花火もしたな」
「俺、また花火やりたい!」
「おぅ!またやろーぜ」
隣で笑う暦にランガは胸が締め付けられる。
頭を過ぎるのは、ちゃんと言葉にしなければと分かっていても断られた時が怖くていつも言い出せずにいた『好き』の二文字。
「…そろそろ帰るかー」
「っーーー暦っ!」
そう言って立ちあがろうとする暦の手を咄嗟に掴んで止める。
「おわっ、ランガ?どうした?」
「暦、俺っ…ずっと言いたい事があって…」
「……」
「だからこのままじゃ終われない……終わりたくないんだ…!」
上手く言葉が出てこない。それでもこの想いが届くようにと、ランガは祈るように握る手の力を込めた。
「……俺も。多分ていうか絶対、同じ事思ってる」
握り返された手は熱く。ヘアバンドをずらしても隠しきれないほど耳や首まで赤らめた暦に、つられて頬を赤く染めたランガは期待に胸を膨らませ。
そんな2人を月と数多の星が優しく照らしていた。
『夏夜(夏よ)、もう少しだけ』