本編 相変わらず双子とフィルチは追いかけっこをしているし、そこにリーも加わった。ケラケラとした笑い声と共にフィルチの怒号が聞こえてくるのが、少しだけホグワーツの日常として溶け込んでいた。未だに捕まらずにいるのだから、凄いとさえ思うのはレイラだけではないだろう。そんな彼等と時々廊下ですれ違いながら、挨拶を交わすのが日常と化した。
「やあ!君も一緒に逃げるかい?」
「あたし何もしてないわよ。……ほら、フィルチが来ちゃったわよ」
「「それは大変だ」」
「おい、フレッド!ジョージ!急げ!」
「「またな、レイラ!」」
呆れたように彼等の背中を見送れば、廊下を右に曲がって行った。歩きだそうとした時、フィルチに捕まってしまいどこに行ったのかと問われた為、左に曲がったとだけ伝えたのだった。
──間違えちゃっただけよ。
誰に向ける訳でもなく一人、肩を竦めてみせつつレイラは本を片手に歩き始めた。
変身術がお気に入りとなったレイラは、変身術に関する本をとにかく見ていたし、ずっと持ち歩いていた。そして、呪文学もとても好きだった。初めて覚えた“ウィンガーディアム・レヴィオーサ“は、成功出来た為、レイラは大喜びだった。
レイラは呪文を成功させる喜びが癖になりそうだなんて考えつつも、いよいよ明日が悪戯の日だと少しばかり気持ちが昂っていた。しかし、その前にあまり気乗りしない授業があるのだ。
──まさか、スリザリンとの合同の飛行術の授業なんて……。
小さく溜息を零したレイラは、今日のお知らせが書かれた羊皮紙を思い出して憂鬱になってしまう。箒に乗るということは、とても楽しみなのだがスリザリンと合同というのが嫌だった。正確に言えば、モンタギューと合同だというのが嫌なのだ。
「……明日の悪戯はモンタギューに投げちゃおうかしら」
小さく呟いた言葉は、本音か冗談か分からないものだった──
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その日の午後三時半、グリフィンドールの寮生に混じって初めての飛行訓練を受けるべく、正面階段から校庭へと急いだ。この日はよく晴れており、心地の良い風が少し吹いていた。芝生が風で揺れるのを横目に、レイラは心地良い風だと感じていた。傾斜のある芝生を下り、校庭を横切って平坦な芝生まで歩いて行くと、校庭の反対側には「禁じられた森」が見え、遠くの方に暗い森の木々が揺れていた。
既にスリザリン生が到着後──
「あれ?何で、ハッフルパフが居るんだ?」
誰かの言葉に周囲が少しザワザワとした。お知らせではスリザリンとの合同授業だったはずだ。しかし、今この場に居るのはハッフルパフ生。一体どういう事だと、生徒達は話していたが「なにをボヤボヤしているんですか」という言葉に、その場の全員が黙った。ガミガミとした言葉ではあったが、誰かが手を挙げた。
「今日はレイブンクローとの合同授業と聞いたのですが」
皆が聞きたいことを問い掛けたのは、セドリック・ディゴリーだった。