フォーチュンドールエピローグ幸が人形を取り戻し、霊魂の魔女を倒してから大きな事もなく3年が経過していた。将信は貝森学園に通っていたものの、あと2年ほど通えるが任意のため、23歳で充分魔導士としてのスキルを身に着けて就活に臨んでいた。そこに幸が教室に入り込んできて将信と話した。
「先輩、卒業しちゃうんですか?」
「まぁ、そうだな。」
「そうですか、寂しくなりますね。」
「そんな永遠の別れでもあるまいし…」
「そうですよね!先輩、一戦交えてくれませんか?」
将信は幸がずいぶん強気になったと感心し、勝負に挑んだ。幸は人形や樹属性魔法を駆使して、将信に挑んだが、将信も強くなっていて、さすがにマグマゴーレムとまで出されると、幸も打つ手がなかった。そしていい汗かいた幸は、ここからが本題であると将信に言った。
「今度、展示即売会があるんですけど、一緒に売り子さんやってくれませんか?」
将信はこれを機にたびたび幸に誘われるようになったのであった。それでもこの2人が恋として互いに向き合うことはきっとないのである。
雫は今日も魔女の集会場にいた。日に日に魔女としての生活を送るようになるも自分の課題が見つけられずにいた。たまに兄夫妻に会いに行くととても歓迎されるがたくさん食べ物をもらうのでなんだか申し訳なくなる。そんなある日、魔女の集会場に疲れ切った信楽が現れた。どうしたのか聞くと、逃げているというのだ。
「信楽~見つけたなの~!」
信楽を思いっきり抱きしめる魔女が現れ、雫は驚いた。信楽曰く、不干渉条約を結んでいた停止の魔女であるが、3年前の霊魂の魔女の件でこの条約があやふやになり無かったことにされたようだ。停止の魔女はかなり動物好きなようで、雫が魔女となった時に機械帝国と化していた英国を最近アニマルパークに改変してしまったらしい。魔女って色んなことをするんだなぁと実感した雫であった。
夏希は久しぶりに海外に行きたいな~と計画していた。いっそのこと世界一周旅行に言っちゃおうかな?美味しいものいっぱい食べるぞ~、まずは英国からだ~!と言って家から飛び出した。
「いってきま~す!」
「いってらっしゃい。」
夏希の声に応対したのは車いす姿で軽く手を振る冬希の姿であった。
クランと雨は結婚式を挙げていた。若い花嫁姿に零子は見惚れているとミラルージュもその姿を動画に収めて今度あった時にでもお姉ちゃんと見ようと考えていた。クランの友人代表として、凛太郎とその付き添いで唯も招待されていた。雨がブーケトスをすると、唯がそれを受け取った。唯の頭に乗っていたティンダロスも喜んでいた。
「やったワン!これで幸せ掴んだワン!」
「じゃあ、次に結婚するのは凛太郎だね!」
「ワン!?」
クランの一言に驚いたティンダロス。そんなつもりではなかったとトホホな表情を見せるティンダロスに対し、凛太郎はガッツポーズをしていた。
誉は故郷の村で今日も蛇神様の所に来ていた。同じように礼拝に来たのか、ドレス姿のストレートな深い緑髪の赤い目の女性がそこにはいた。ドレスの中から蛇をのぞかせていて、こんな蛇の仲間いたかと疑問に思う誉に、ロイは言った。
「ここ3年くらいで新しく生まれた蛇だ。スキュラという。」
誉は割と新入りなことに気が付き、スキンシップをとろうとしてスカートをめくると、ロイに思いっきりぶん殴られた。そこに鶴花が現れ、なぜここに誉がいるのか尋ねた。
「お兄様!今日は萌ちゃんとデートする日でしょ!」
「あれ?そうだっけ?」
「もう!萌ちゃんだって高校生だし、お年頃なんだからね!ちゃんと約束は守らないと!」
「婚約はしてるけどさ…」
「萌ちゃんが変な行動取り始めても、知らないからね。」
とりあえず、ロイと共に鶴花は誉を社殿から追い出し、萌のもとへ向かわせるのだった。
朝と夜は魔物ハンターの仲間入りをして、瀬津たちと異世界に飛んでいた。そんなある日のことだ。瀬津が前から気になっていた夜のタトゥーについて聞いた。それが呪いであることを言うと朝は呪いを解く方法を探し出した。そんな中、漣は一言漏らした。
「そういえば、どこの世界だったっけ?ドラゴンの血が万物の薬になるって…」
瀬津と天音は漣を睨んだ。漣はハッとして口を押えたがもう遅い。朝は天音がドラゴンであることをここ3年で聞いてたので、天音の血で夜の呪いが解けるならちょっとくらいの怪我いいよねと思い始めた。
「朝さん落ち着いて~」
「これが落ち着いてられるかぁ!」
何度説得しても朝が止まる気配はなく、漣はリーダーに相談することにしたところ、ちょっとした健康診断で採血をすることにして、そのおこぼれで夜に飲ませることにした。しかし、呪いは解けたものの、夜の首裏には呪いとは違う謎の紋様が浮かび上がっていた。
「これはもしかすると、眷属になってしまったのかもしれないね~。」
「けんぞくってなぁに?」
「天音ちゃんにはまだ早いかなぁ…ってえええええ!?」
「おいどういうことだ!?」
「僕も知らない!いや、え!?天音ちゃんって僕たちが考えてるよりももっと上級のドラゴンってこと!?」
夜は天音の眷属となってしまったが天音はよくわかっておらず、解消するにも天音がもっと大人になってからという話であった。天音が普通のドラゴンではなく龍神の落とし子であることを知るまではまだ数年先の話である。はてさてどうなることやら…
フォーチュンドール 終