幸と雫のハロウィンSS10月31日の昼間、幸の家では人形達が玄関の装飾やジャックオランタン作りをしていた。一方で幸は唯と雫を誘ってカップケーキを作っていた。
「幸さん、材料はこれで揃いました?」
「そうね、唯と雫はこの作り方をみて、カップケーキを作ってね。フレーバーや飾りはこっちで切っておくから。」
「わかり…ました…、できるかなぁ…」
「少しずつやっていきましょう。唯もカップケーキなら包丁を使わないから安全にできると思うし。」
「でも料理なんてあんまりしたことないからなぁ。」
「落ち着いてやればできるものよ。」
幸は唯と雫に指示を出しながら、色とりどりのかわいいカップケーキを作っていた。幸が珍しく張り切っているのは、先日、将信がハロウィンの日に地元の仲のいい子供たちを連れて知り合いの家を何件か周るというので、幸もなにかのインスピレーションになるかと思い、将信に家に来てもいいと言ったのだ。子供たちに配るためのお菓子として、カップケーキを作ろうと思い、たくさん作るために二人を誘ったのだ。結果的に料理の経験や、楽しい思い出になっているので、すでにとても楽しめている。不安と言えば、いきなりきた子供たちにお菓子をあげたところで、いたずらされたりたくさん話すことになって緊張したりないかと言ったところだが、そのときはそのときで将信にフォローしてもらうことにしよう。
夕方になり、将信から幸にこれから子供たちを誘って向かうと連絡が入ると、唯と雫も帰る準備をしていた。2人は一緒に作ったカップケーキをいくつか持ち帰ることにして、唯は凛太郎に、雫は澪たちに渡すために、帰るというのだ。幸は人形達と話して時間をつぶしながら、将信や子供たちを待ち、一緒にハロウィンを楽しんだのだ。
一方、澪の前にはどっさり大量のお菓子が積みあがっていた。真昼が雫にお菓子をお願いされた時に渡そうと思って買ったものらしいが、澪と夜が協力しても食べきるのには数日かかるくらいだ。それどころか夜は呆れて逃げたレベルである。そうこうしていると、雫がインターホンを鳴らして、家に入ってきた。
「雫ちゃーん、お帰り~今日はハロウィンだから~合言葉あるよね~?」
「はぁ、真昼さん、それあえて言わせるんですか…」
「あ、あの…友達と…作ったので…良かったら…」
雫がカバンから先程作ったカップケーキをみせると、澪と真昼は心臓を撃ちぬかれたように驚き、心の中で全力で神に感謝した。可愛いカップケーキと並ぶ健気な雫の姿を澪と真昼は心にとどめるのだった。