フォーチュンドール3章4話「ばぁん!冷綺夜光(ひゃっきやこう)っていうのはどう!?」
「ダッセ…。」
「いーんじゃねえの?」
「わぁ、それぞれの特徴とかつかんでいてかっこいい!」
「え?ナニコレ?あたしの感性がおかしいの?」
「いや、俺はテキトー、そういうセンスないし名前は飾りだからな。」
クランのチームはチーム名を決めていた。4人で集まるのはこの日が初めてであり、夜は他のみんなと自己紹介をしてグループの輪に入っていた。夜曰く、チームリーダーはクランに任せるというのだ、夜はそこまでリーダーシップに自信はないらしく、さらに後輩のこれからの経験やクランや双子の中の良さを考えての事だ。いろいろ話し合ったところで雨が前から気になっていたことを聞き始めた。
「そういえば、夜さんはこの学校じゃ有名って聞くけど、あたしたちは入学したてで、なんで有名なのかわからないから教えてほしいんだ。」
「そのことならこの俺が説明してあげよう!夜先輩は誉先輩っていう犬猿の仲な相手がいてもう目を合わせると喧嘩が始まってよぉ~!これがまたかっこよくて派手にやってくれるから一度二人にも見てもらいたかったぜ。」
「ふぅん。」
「えぇ~それは見てみたいな~。」
「やめとけ、あんまり他人も巻き込みたくないし、これ以上やると退学にされるからなぁ。」
「にしても、そんなに仲悪いのには理由があるのか?本当に嫌いなら目も合わせないと思うけど。」
「確かに気になる!夜先輩って一年の時に誉先輩と揉めたんですか?」
「もっと昔からだ。」
夜は左肩のタトゥーらしき模様を右手でおさえながら誉との関係について話す。それは夜が13歳の時に遡る。夜はある組織から勧誘されていていたが、当時大好きだった姉がいつもその勧誘を断っていたのであるが、ある日その姉が亡くなってしまい、夜は心に空いた穴を埋めるようにその組織に加入したという。そして、その組織に連れられていたところ、誉の出身の村を横切った時に、その村の何を見たのかはっきりは覚えていないが、怪しく思った夜は村人に襲い掛かり、その勢いで誉の左目を斬ったのだ。その代償に誉が連れている蛇に大蛇に左肩を嚙まれ、そこから誉の能力なのか?呪いがかかっているのだという。
話を聞いて、3人は唖然とする。それにしても、呪いにかかったことで代償を払ったのではないのか?なぜ目を合わせて喧嘩を吹っ掛けるのか?そういった疑問点も浮かんでくる。夜はその疑問点に対しても、答えを出してくれるのだ。夜は色んな病院や、霊能力者に聞いたものの、これほど強い呪いは上級の呪術師でも掛ける事が出来ないだろうし、解くこともできないもので、普通なら三日ほどで死に至るものであるのだが、夜の特異体質の魔法耐性により、ほぼ進行していないのだという。ここまで生きてこられているのもこの体質のお陰であり、この貝森第二高校に入学したときに本来死んだはずの憎い相手が目の前に現れた誉は気が気じゃなかったそうだ。
クラン一連の話を聞いて、夜に土下座した。
「夜先輩、すいませんでした!俺、てっきり先輩2人がライバル関係だと思って、友人とライバル関係組もうって言って友人に誉先輩と組んでもらったんです。」
「はぁ、そんな理由でチーム組みたかったわけぇ?」
「へぇ、でもライバル関係でいいんじゃねえの?直接戦わなくても、順位で勝てばいいだろ。俺は成績目的じゃないお前を組みたかったわけだし。
「よし、じゃあ成績関係なく凛太郎や誉先輩のチームの上を行くことを目標にするぞー!」
「お―!」
「やれやれ」
「私たちも一緒に頑張ろう雨ちゃん!」
こうして冷綺夜光のチーム戦が始まったのである。
数ヶ月の戦いを繰り返しているそんな中、とある日の凛太郎は、加々良兄妹と話をしていた。相変わらず癖なのか、凛太郎は舌をペロっと出してはしまう動作をしている。
「凛太郎くん、それ癖?」
「あぁ、うん。お腹空いてきちゃうとついやっちゃうんだ…あはは。」
「ふぅん…。そんなに頻繁にお腹が空くのにそんなに貧弱な体してるんだな。」
「あ、はい…。そういえば、誉先輩は体術も炎魔法も拳銃もいろいろ使えますけど、どうしてそんなに覚えようと思ったんですか?」
「まぁ、体術や魔法は得意だからと教えてくれるやつがいるからな、ただ火桜のやつに最もダメージを与えられるのが銃だとわかってな。あいつは大剣を振るうから近接戦闘はきついし、魔法はほとんど効かない。」
「魔法がほとんど効かない!?そんなにやばい奴なんですか?」
「知らねえのか?あいつの特異体質、あれがなければ今頃死んでるはずなのによう。」
軽く爪を噛む誉、凛太郎を睨んだ時よりも殺意に満ち溢れている。それほどまでに憎い相手なのだろう…。誉から黒いオーラが現れたと思えばそれが鱗の模様になっていき深緑の大蛇となる。凛太郎はまたその蛇に睨まれ硬直する。そこに他の生徒が戦いを挑んできた。誉も気晴らしに戦闘に挑む、結界を展開し、みんな入るが鶴花は片隅で壺を持っているだけで戦わない。戦闘を始めると、誉はひたすら二丁拳銃で相手を打ちまくる。相手が近づけば蹴りを食らわせ、炎魔法で距離を置く、拳銃の弾が切れたらその辺に投げ捨て、腰に6丁まで添えている次の拳銃を取り出す。投げ捨てられた拳銃のところには黒紫の小さなゲートが現れその中から無数の小さい白蛇が飛び出し、拳銃を回収する。そのゲートは鶴花の持っている壺につながっていて、鶴花は拳銃を回収し装填した。6丁の拳銃を使い切ったところで誉が手を伸ばすと、手の近くにゲートが現れ、無数の蛇たちが誉に拳銃を渡す。この繰り返しである。凛太郎は、ドレインを中心に樹属性魔法で相手の足止めを行っている。こうしてこのチームは勝率を上げていったのだ。
一方、冷綺夜光の戦いはというと、最初のうちはなかなかチームワークがうまくいかず、勝率が意外と五分五分である。ほとんど魔法メインのチーム対して夜が突っ込んでいった時や、完全に技量で勝っているときくらいで案外よそのチームも強いチームばかりであった。それでもクランは自分が目立っているならそれでいいし、夜も自分の弱点を探ってより鍛錬するようになっているので結果オーライだと思っている。
「問題はチームワークだろ!あたしたちは普段から2人でやってきたからともかく、男2人は自由奔放すぎ!特にクラン、あんたチームリーダーでしょ!」
「いやぁ~、夜先輩が魔法効かないなら俺が超大型神聖魔法ぶっぱしたらめちゃくちゃかっこいいって思うし、それの詠唱邪魔されないために雨と零子が守ってくれたらめちゃくちゃいいと思うんだけどな~。」
「やっぱり、自分ばっかりじゃない!だいたいその大型魔法で夜先輩はともかくあたしたちはどうなるのよ。」
「そのときに全員倒せば問題ない!」
「んあー!」
「まぁまぁ、雨ちゃん、私たちが臨機応変に対応しよう。」
クランの魔法はそれそこ強いものであるがやはりチーム戦となると苦手なようで、実はこれがきっかけで前の年はあんまり勝てなかったのだがクランにその自覚はない。雨の戦い方も基本は念力なのだが結界の中は障害物が少ないため、パーカーの袖に腕を通して体術で戦うことのほうが多くなっている。その時に夜の大剣とぶつからないように調整するのもなかなか難しいものである。零子は投剣で雨のフォローはできるものの、やはり慣れてない夜となると調整が難しいようだ。個人個人がそこそこの強さがあるはずなのに勝率はなかなか上がらなかったものの、少しずつ成長していった。
そして、時は流れ、最終トーナメントに進んだのは誉たちのチームだった。冷綺夜光はおしくも33位だったため最終トーナメントには参加できず、誉たちも相手が悪く一回戦敗退であった。クランは夜と誉の決着をみたかったな~と言い残しそれぞれの生活に戻るのだった。
つづく