フォーチュンドール3章番外編2……
………あれ……ここ…は……?
…蛇の教会…蛇神様の部屋…?
なんで…こんなところに…
そもそも…何していたっけ?
確か、誉を攻撃した人間に嚙みつこうとして…
…体が動かない…
黒くて大きな蛇の黄色い目がぎょろりと辺りを見渡すと、目の前には三日月の模様のついた小さな白い蛇とシーサーペントと呼ぶにふさわしいエラやヒレのついた大きな青い蛇がいたのだった。
蛇神様の第一従者にして最強の毒を持つ三日月の蛇、愛称はミカヅキ、普段は穏やかな性格であるが物忘れが多かったりどこででも寝たりするうえ、怒ると怖く、怒らせた相手を抱き枕にする上かなり寝相が悪いのだというので、普段ロイも手を焼いている。そんなミカヅキが珍しくはっきり起きていて、ロイの介抱をしているのだ。
ミカヅキとともにロイの介抱をしている青い蛇もとい水の大蛇、愛称はミズチ、天真爛漫でアイドルを自称しており、いつも輝いていると思っているがいじられキャラな一面もあり、沸点は低く口癖で「おこだよ」といったりする。
そんな二匹のとってロイは昔なじみの存在であり弟のようなもので、今回大けがしたことでかなり心配しているのだ。
「ロイ…どうしてこんな大けがを?とても心配しましたよ?」
「こっちが知りた…」
「あぁ!ロイ!まだ動いちゃダメ!いくら痛み感じないからってそんなんじゃ本当に体動かせなくなっちゃうよ?」
「ミズチ、声が大きいわよ。」
「ミカヅキだってロイの目が覚めなかったらってすごく心配してたでしょ!」
ロイは大けがという言葉から何が起きたのか思い出した、誉と夜との戦いで夜にとどめを刺そうとしたところほかの誰かに誉が攻撃されて、夜の拘束を解いてしまったことで自らも攻撃を受けてしまったと。しかし、痛覚もなければ本来実態もないはずの自分をなぜ攻撃できたのかは不明であるが…
「お、ロイちゃん目が覚めた?目が覚めた~??」
部屋の壁を這いずり回り、狡猾な黒い蛇であるコウカツがちょっかいをかけに来た。蛇神様の第二従者であり、イタズラ好きで食べると賢くなれるという知恵の実を出すことができ、人間にそれを与えたという話はアダムとイヴの原罪の話として有名になっている。
コウカツがミズチにちょっかいをかけ、ミズチの怒りを買うと、ミカヅキの怒りを買う前にさっさと逃げだすとする。
しかし、その行く手は蛇の絨毯によって阻まれた。コウカツが驚き青ざめた顔をする。蛇の絨毯、愛称はフィオ、蛇神様が下界に降り立つときに絨毯としてその足場に敷かれる蛇の軍勢であり、一匹一匹違う毒を持つことで毒の解明までに時間がかかり、死に至らしめることは容易となっている。普段はクールでおとなしいフィオであるが、これまた怒ると怖く、怪力になるが周りが見えなくなり、いわゆるバーサーカー状態になるのだ。
コウカツが通ろうとした廊下の床、壁、天井にまでフィオの軍勢がびっしり広がっており、しかし、後戻りするとミズチがいるという状態となる。コウカツが硬直しているうちにフィオは軍勢の波となって、コウカツを捕らえると、フィオは人間の姿になり、その手にはコウカツが握られている。フィオの人間姿は黄色くウェーブのかかった髪をサイドテールにしており、髪留めに紫色のコブラが使われていてこれもフィオの軍勢の一匹である、服はタートルネックのノースリーブの服にスカート姿である。
「まったく、大けがしているやつにちょっかい掛けようとするなよ」
「ひぃん、助けて…。」
「ありがとうフィオ!コウカツもめっだよ。」
「ロイがいないと、みんなのまとめ役がいないから本当に大変だわ。」
「でもフィオが冷静な判断で何とかまとめてくれているでしょう?」
「そうなのよ、私ものんびりしたいから、ロイ、さっさと治してみんなの事まとめてよね。」
「まぁまぁ、ロイもいつもこんな役割だからたまには思いっきり休ませてあげましょう。」
「そうね。何千年もこうやってきたんだし、休ませてあげるか、そのためにもコウカツ、お前はしばらくこの部屋出入り禁止な。」
「えぇ~!ここは神聖なみんなの蛇神様の部屋だよ~?なんで僕ちゃんだけ…っていうかなんでここで介抱してるんだよぉ~!!!!」
言っている途中からフィオに連れていかれるコウカツ。
ロイもなんだか一安心したようで再び眠りにつくことにした。
体が動かせないことにはどうにもならない、ここはおとなしく二匹の協力のもと回復を待つとしよう。
一方そのころ、誉は鶴花と萌ちゃんに介抱されていたのだがしばらく蛇と戯れることができなかったのでかなり不機嫌になっていたとか
たまには家を抜け出して蛇の教会に向かおうとするも鶴花にあっさり発見されて連れ戻されたんだとか
「もう、お兄様、そんなに動いたらいつまでたっても治りませんよ。」