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    人狼のタイカケ

    #タイカケ

    ※例の人狼のパロです。役職以外全て幻覚。


     あぁ、いい匂いがする。美味そうな匂いだ。
    「はぁ……」
     匂いを食べるように、口で大きく深呼吸する。匂いの元は、どこだろう? 目を閉じて意識を集中させて、匂いの元を辿る。月明かりがうっすたと照らす夜の村をゆっくりと歩く。人間たちは、家の中に入ってビクビクしてるみたいだ。人狼に食われない為に。
    「ん、近いな……」
     匂いが濃くなった。俺はその匂いの元の家を確信して、その家の前に立った。
    「やっぱり……」
     匂いを辿っている途中から、薄々感じてた。この匂いの正体は……。
    「おい、カズオ」
    「はぁーい」
     ドアをノックすると、軽やかな声で返事が返ってくる。
    「あ、タイガきゅんじゃん!」
     中からカケルが顔を出す。入りなよ、と俺を簡単に家に入れるコイツは、ちょっとバカなのかもしれない。
    「こんな夜中にどうしたにょ? 人狼が出たらどうするの~?」
     ニコニコ笑いながら、カケルは俺にお茶を出す。人狼が出たら? それをこの俺に言うのか? まぁ、そうだろう。俺は自分の正体を隠して、この村にいるんだから。
    「さ、温かいうちにどうぞ」
    「ん」
     俺はカケルの入れてくれたお茶に手を付ける。人間の飲み物や食べ物はあんま美味くないけど、コイツの用意してくれるものは、いい。カケルの匂いがほのかについていて、俺の食欲をごまかせる。
    「おめぇの出してくれるものって、美味い」
    「そぉ? 大したもの作ったことないんだけど?」
     カケルは俺の正面に座って、同じようにお茶を飲んだ。俺はこの時間が好きだ。カケルの匂いが来いのは、気持ちいいのと同時に食欲を刺激されるけど、何となく、まだ、コイツのことは食いたくない。こうして過ごす時間が、好きだから。
    「ん、なんか眠くなってきたわ」
    「またぁ? しょうがないにゃあ、タイガきゅんは! 今日もうち泊まっていていいよ!」
     俺は、カケルの家に来ると決まって眠くなってしまう。リラックスしすぎだろ……。

       ***

    「ごめんね、タイガ。もっとおしゃべりしたいけど、食べられたくないから、夜の間はよく眠ってね」
     カケルはタイガに毛布を掛けると、ポケットの中の小鬢を取り出した。
    「あぁ、睡眠薬もうなくなっちゃうな。また、貰いに行かないと」
     もうあと少ししか残っていない錠剤を見て、カケルは溜息を吐いた。
    「大丈夫、おれっちは人間の味方だけど、タイガの味方でもあるからね」
     カケルはゆっくりと手を伸ばし、タイガの伸びた爪に触れた。
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    オルト

    TRAININGタイカケ。
    付き合っていくうちに、カケルくんに対してだけ策士になっていくのもいいな。
    このところ、結構冷え込む。青森に比べたら全然だけど、それなりに東京も寒くなるんだな、なんて思いながら窓から冬の空を見上げた。今にも降り出しそうだ。この気温だと、みぞれか……雪になってもおかしくない。
    「さみぃよなぁ」
     今朝、寒い寒いと言いながら出て行ったカズオのことを思い出す。寒いのならもっと厚着をしていけばいいのに、と思うけど、ファッションがどうのこうの言って寒そうな薄っぺらいコートで出て行った。そう言えば、傘、ちゃんと持っていったのか? まぁ、アイツのことだから準備してるだろうし、持ってなくても車移動出し大丈夫か……。でも……。
     俺はカズオに一言連絡を入れる。
    ―今日、帰りは?
     仕事中だろうから返事はすぐに来ないだろうと思っていたけど、案外すぐに来た。
    ―今日は久しぶりに電車で帰るよん! 雨降りそうだから急がなきゃ~
     めずらしい。この言いぶりだと、傘も持ってなさそうだ。
    ―何時ころ駅着く?
    ―あと十五分くらいかな。
    「よっし」
     俺は上着を羽織り、全然使ったことのないマフラーを掴んで玄関に向かった。自分の傘とカズオの傘を掴んで外に出ると、ぴゅうと冷たい風が頬を刺した。
    「寒 1064