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    22蕎麦屋のタイカケとメリナさん

    「誰だおめぇ!」
    「こら、タイガくん! そんないい方しないの!」
     カケルが連れてきた男に向かい、タイガはまるで忠犬が威嚇するような態度をとる。
     タイガの荒い声に、厨房からミナトが何事かと顔を出す。
    「タイガ、お客さんになんて態度を取るんだ」
    「だって!」
     タイガはそう言うと、カケルとカケルの連れてきた男の間に割って入った。
    「コイツ、カケルにべったりくっついて来た!」
    「タイガくん、コイツだなんて言わないで」
     カケルはタイガに視線を合わせ、困った顔をして言った。タイガが自分に懐いていることも、自分と親しい人になぜか牙を剥くことも、カケルは知っている。タイガがもっと幼い頃からそうだったから。でも、タイガを大事に思うからこそ、自分の身近な人とも親しくなって欲しかった。
    「タイガくんにも、この人とお友達になって欲しいから連れてきたんだよ」
     そう言われても、初めて会う男は自分よりもずっと大人で、カケルの隣に並ぶとバランスが取れているように見えて、タイガは悔しくて仕方なかった。
     カケルよりは背が低いが自分よりもずっと大きいその男。カケルはやはり、子供の自分よりもこういう男の方がいいのだろうか? そんな思いをタイガは抱く。
     カケルと同じ制服を着ているから、同じ学校の生徒であろうということもタイガはすぐにわかった。
    「……」
     タイガはカケルを守るような姿勢で男を睨み続ける。すると、男の方もタイガに視線を合わせた。
    「こんにちは、君がタイガくんだね? 僕はメリナ。よろしく」
    「よ、よろしく……」
    「僕もお蕎麦、いただきに来たんだ」
     メリナの言葉に、タイガの表情がパッと変わった。
    「おめぇ、蕎麦好きなの?」
    「うん! 君のうちのお蕎麦が美味しいって聞いたから、食べに来たんだ」
    「という訳だからさ、タイガくん、お蕎麦お願いできる?」
    「うん!」
     カケルの言葉に大きく頷くと、「お手伝い」の為に厨房の中へと入っていった。
     それから数分後、タイガが盆にざるそばを乗せてそっと歩いてきた。そんなタイガの瞳に映ったのは、外国語で書かれた本を楽しそうに覗く二人の姿だった。自分には全くわからない文字。一体何が書かれているのか、どうしてそんなに楽しそうなのか、何もわからない。自分の全く知らない世界に二人でいるように見えて、今まで感じたことのない程の大きな感情が腹の奥底でぐらぐらと煮える。
     タイガは丁寧に盆をテーブルに置くと、メリナに険しい表情を向ける。それから無理矢理カケルの膝の上に座った。
    「た、タイガくん?!」
     カケルは驚いて声を上げタイガを下ろそうとするが、タイガはテーブルにしがみついて動かない。
    「やっぱおめぇ、油断できねぇ」
     そう言ってメリナを睨みつけるカケルに、メリナは一瞬驚いた表情を浮かべてから笑顔になった。
    (やっぱり、カケルの話を聞いてて想像した通りだ。この子は、カケルのこと……。それに、カケルもこの子を……)
    「な、なに笑ってんだよ」
    「どうしたの?」
     メリナの笑顔の真意がわからず、タイガとカケルは首を傾げた。
     その様子がまた微笑ましくて、メリナはふっと噴き出した。
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