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    オルト

    どうしようもないものを投下

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    オルト

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    タイカケ(多分付き合ってる)

    「来年の今頃は、おれっちたちも卒業ライブかぁ」
    「は?」
    「いや、は? って何よ~?」
     カズオはクスクス笑って俺を見る。だって、カズオが変な事言うからだろ? 来年卒業ライブ、って……。あ、そうか、そうだよな。変なのは俺の方だった。カズオは俺よりも一学年上なんだ。普段全く意識していないから、忘れそうになる。別に同学年だとか年下だとかは思ってないけど、カズオはいつも俺より一歩先を歩いてるんだ。
    「もしかしてタイガきゅん、おれっちが留年するとでも思ってる? おれっち、確かに出席日数は少ないけど、ちゃんと最低ラインはクリアしてるし、成績だってトップなのよん?」
    「わーってるよ……。おめぇさ、卒業したら、どーすんの?」
    「え? どうするって、進路のこと?」
    「まぁ、その、色々」
     カズオはきゅっと口を閉じて、急に真剣な表情をした。視線を上へ下へときょろきょろ動かし、何か考えているようだ。俺が想像することもできないような、難しい未来を想像しているんだろうか? 仕事でどこか遠くに行くとか、プリズムショーをやめるとか、言わないよな?
     当たり前に今と変わらずにあると思っていた未来が、急に不確かなものに思えてきた。いや、当たり前だ。未来はそういうものなのだ。俺だって、数年前はまさか自分が東京の学校に行くなんて思ってなかったし。
    「えっと……」
     カズオが口を開いて、俺の心臓がドクンと跳ねる。もしも、俺が望む未来と全然違うものがカズオの口から紡がれたら、俺はどう反応したらいい? カズオの決めたことに口出しする気も、そんな資格も俺にはない。だって、カズオの未来はカズオのものだから。
    「……続けるよ、プリズムショーは」
    「え?」
    「あれ? そのことが聞きたかったんじゃなくて?」
     カズオは「あれー? 間違えたかなぁ?」と呟いて頭を掻いた。
    「タイガきゅんの顔に書いてあるように見えたのに」
    「顔に?」
     実際書かれているわけではないのはわかっているけど、俺はつい、両手で顔を擦った。その様子を見て、カズオが声を上げて笑う。
    「あはは! あのね、タイガきゅんのキャワイお顔に『カズオプリズムショーやめんな』『勝手にどっか遠くに行くな』って書いてあるよん」
    「!?」
     やっぱり、カズオには全部見透かされてるんだ。
    「まぁ、お仕事で出張はあるとは思うけど、もうタイガに黙って行ったりしないから」
     カズオはそう言うと、まるで子供をあやすみたいに俺の頭を撫でる。いつだって、カズオは俺のことを子ども扱いだ。
     この先、互いにどんなに歳をとっても、この扱いは変わらないんだろうか?
     もし、学年が同じだったり、俺の方が先輩だったら、少しは俺の扱いが変わったんだろうか?
    「にゃに? どしたの?」
     俺を見て、カズオは不思議そうに首を傾げた。
    「別に」
     きっとコイツは、俺との年齢差がどうであっても俺がこのままだったら同じ扱いをするだろう。
     こんな「もしも」やありえないことを考えてる暇があったら、何でもいいか少し成長して、カズオが頼りたくなるような男になろうと思った。
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