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    オルト

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    オルト

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    付き合い立てタイカケ
    タが強くてアイスの棒が霞んでるw

    「わ!」
     休日、二人で出かけた帰りにコンビニでアイスを買った。公園でソレを食べながらぼーっとしていたら、カズオが突然大声を上げた。驚いて顔を上げると、カズオはアイスの棒を両手で持って震えていた。
    「見て、タイガきゅん! あたりだって!」
     カズオがこっちに向けたアイスには、確かに「あたり」の文字。俺も何度も見たことがある。
    「すごい、これ! こういうのってホントに当たるんだね~!」
    「そりゃ、当たるだろ。俺も、今まで何度も当ててるし」
    「マジで?! さっすがタイガきゅん」
     カズオは瞳を真ん丸にして、上ずった声を上げた。そんなに驚くことだろうか?
    「おれっち初めて見たよ~」
     嬉しそうな顔でじっと棒を見つめて、スマホで写真を撮って(なぜか角度を変えて何枚も撮影している)、そしてもう一度、うっとりした表情でじっとアイスの棒を見つめる。
    「何度も買ってりゃ、そのうち何度も当たるって。おめぇはそもそもそういうアイス、あんま食ったことないだろ?」
    「まぁ、そうなんだけどさぁ~。初めてだから嬉しくって。タイガきゅんも初めてあたりが出た時はそうじゃなかった?」
    「うーん」
     多分、そうだったと思う。でも、正直良く覚えていない。そのアイスは、袋の絵柄こそ少し変わったものの、かなり昔から(多分俺の生まれる前)存在していて、物心ついたころにはいつも家の冷凍庫にあったし、記憶にある一番古い「あたり」も、何度目かのあたりだ。
    「なんか、いいな」
    「え? あたりが?」
    「いや、そうじゃなくてよ。俺、初めて当たった時の記憶、幼すぎてないんだよな」
     カズオに記憶の中で一番古い「あたり」の話をしたら、驚いた顔して笑って、そして嬉しそうな顔をした。
    「なにニヤニヤしてんだよ」
    「べっつに~!」
     コイツの考えてることは、よくわからない。よくわからないことで喜んで、はしゃいで、そしてよくわからないことで悩んでいる。
    「俺の初めての『あたり』の記憶に、タイガきゅんもいるの嬉しいにゃ~」
    「ふぅん」
     そう言われると、自分の初めての記憶にカズオがいないことが寂しく思えてきた。当たり前だし、仕方ないことだけど、何となく悔しい。きっと、その気持ちが顔に出ていたんだろう。カズオが優しい目で俺を見て、あったかい手で俺の頭を撫でた。
    「じゃあ~、これからはさ、二人でいっぱい『初めて』の記憶作ろうよ」
    「あ?」
    「だから、二人でいっぱい一緒にいろんなことしてさ、『初めて』も『二回目』も『何回目』も、二人の思い出にしちゃお!」
     カズオは嬉々としているけど、そんなに「初めて」になるようなことって、あるか? そこそこ色々経験してきたけど……。いや、俺が知らないだけで、世界にはまだまだ俺の経験してないことが山ほどあるはずだ。そして、カズオはソレを知っている。
    「俺はともかく、おめぇは未経験のことなんか殆どねぇんじゃねーの?」
    「え~あるよ! タイガきゅんからしたら意外かも知れないけど、おれっち昔から色々制限されてたし、忙しくってね~」
     確かに、言われてみればそうかも知れない。
    「ん、じゃ、色々やってみっか二人で」
    「うん!」
     俺とカケルは笑い合って指切りをした。こんなアイスの棒に負けないくらい、カズオの「初めて」の思い出を、俺でいっぱいにしてやるからな。
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