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    パンそばのタイカケ
    「いつまでも一緒に居たい」から、「一緒に居るのが当たり前」に気持ちが変化していくといいなぁ。

    散り始めている桜並木の道を歩く。仕事を終えて、花見をしながら帰ろうということになった。ホントは花見でもしたいところだけど、花見が出来る公園は人が多くてゆっくり花見をするのは難しそうだ。まだまだ有名ではない俺たちだけれど、そこそこ顔は知られている。それに、オフモードのカケルを誰かの目に触れさせるは嫌だった。
    「綺麗だねぇ」
    「そうだな」
     桜を見上げるカケルが綺麗で、ついついカケルの方にばかり目を向けてしまう。
    「こうしてタイガくんと一緒に桜の季節を迎えるの、何年目だろうねぇ」
    「そーだなぁ……」
     カケルとコンビを組んでから、もうかなり長い。そもそもコンビを組む前からの事を考えれば十数年といったところだ。パッと計算できないくらいには、何度もカケルと桜の季節を迎えている。
    「来年もその先も、ずーっとタイガくんと一緒に桜を見られたらいいなぁ」
     目を細めて言うカケルは、綺麗で儚げで、まるで映画のワンシーンみたいだ。けど、
    「おめぇなぁ、そのセリフ、まるでフラグじゃねぇか」
    「え? なんの?」
    「映画だと、そんな顔してそういうこと言うと叶わないんだよ」
    「え、え~?! やだやだ。ていうか、そんな顔ってどんな顔?」
     不安げな表情でカケルは言った。数歩先を歩いていたけれど、俺の元まで戻ってきて俺の手を取って握った。人が少ない並木道とはいえ、どこで誰に見られているかわからないっていうのに。
    「そーゆー顔だって」
     俺がカケルの鼻をつまむと、カケルは「ふぎゃ」と情けない声を上げた。へなりと下がった眉で俺を見つめるカケルの瞳には、うっすらとうるんでいる。舞台の上のカケルからは、想像もつかない。俺だけに見せるこの表情を、ずっと隣で見ていたい。
    「僕、ずっとずっとタイガくんとコンビでいたいよ」
    「わかってるって。俺もそうだよ。おめぇがフラグを立てるなら、俺がへし折ってやるから心配すんな」
     そう言って頭を撫でてやると、安心したように笑った。
    「よかったぁ。へへっ。ねぇね、帰ったら早速次の舞台の台本つくろ!」
     パッと花が咲く様に笑うカケル。本当に綺麗で、このままこの綺麗な景色に溶けてしまいそうだ。俺は「もう少し、桜見てから帰ろうぜ」と声を掛けてカケルの手をしっかりと握った。
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    recommended works

    オルト

    TRAININGタイカケ。
    付き合っていくうちに、カケルくんに対してだけ策士になっていくのもいいな。
    このところ、結構冷え込む。青森に比べたら全然だけど、それなりに東京も寒くなるんだな、なんて思いながら窓から冬の空を見上げた。今にも降り出しそうだ。この気温だと、みぞれか……雪になってもおかしくない。
    「さみぃよなぁ」
     今朝、寒い寒いと言いながら出て行ったカズオのことを思い出す。寒いのならもっと厚着をしていけばいいのに、と思うけど、ファッションがどうのこうの言って寒そうな薄っぺらいコートで出て行った。そう言えば、傘、ちゃんと持っていったのか? まぁ、アイツのことだから準備してるだろうし、持ってなくても車移動出し大丈夫か……。でも……。
     俺はカズオに一言連絡を入れる。
    ―今日、帰りは?
     仕事中だろうから返事はすぐに来ないだろうと思っていたけど、案外すぐに来た。
    ―今日は久しぶりに電車で帰るよん! 雨降りそうだから急がなきゃ~
     めずらしい。この言いぶりだと、傘も持ってなさそうだ。
    ―何時ころ駅着く?
    ―あと十五分くらいかな。
    「よっし」
     俺は上着を羽織り、全然使ったことのないマフラーを掴んで玄関に向かった。自分の傘とカズオの傘を掴んで外に出ると、ぴゅうと冷たい風が頬を刺した。
    「寒 1064

    オルト

    TRAINING成人タイカケ。
    おじさん組と無自覚両片想い。
    「それでさぁ~、タイガきゅんがさぁ」
     顔を真っ赤にしたカケルが、日本酒をちびちび飲みながら声を上げる。
    「うんうん、それで?」
    「こんどね、おれっちの出張の前に、どこか遊びに行こ~って、いってくれたのぉ!」
     締まりのない顔で言うカケルに、ミナトが「良かったなぁ」と声を掛けると、カケルは「いいでしょ~」と言って笑った。その隙に、ユキノジョウはカケルの手元から徳利を遠ざけ、自分の手元のものと入れ替えた。
    「だからねぇ、おれっちもう楽しみで楽しみで……」
     カケルはそのまま徳利からおちょこに中身を注ぎ、またちびちび飲み始めた。カケルは気付いていない。徳利が入れ替わったことも、その中身が水であることも。今日はいつもに比べて格段に飲むペースが速く、先程からユキノジョウもミナトもカケルの様子に気を配っている。だいぶ酔っているようで、タイガに遊びに行こうと誘われた話を何度もしている。話を聞かされている二人は、その度に初めて聞いたように反応していた。
    「これ、デートって思ってももいいのかにゃぁ?」
    「あぁ、デートだろう」
    「そうそう、香賀美は照れ屋だから、そう言わないだろうけどね」
    「えへへえぇ。 1563