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オルト

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TRAINING

1472文字
付き合ってる成人タイカケ
雑誌の内容はお好きにご想像ください

　本屋さんで手に入れた雑誌。同じものを三冊。大事に抱えて部屋にホテルの一室に戻る。
　ここ数日滞在しているホテルは、広すぎず狭すぎず、落ち着く内装でとても過ごしやすい。雑誌をデスクに並べてライトをつける。
「ふふっ、かぁっこいい！」
　雑誌を飾るのは、俺の大好きなタイガきゅん。少し大人びた表情で、カッコいい洋服を着こなしてこっちを見ている。昔と比べてだいぶ成長して、雑誌等の撮影にも慣れて来て、ここ最近は特に凄くイイ写真が撮れている。だから本屋さんで見かけて、つい、三冊手に取ってしまった。
　鑑賞用、保存用、布教用。
　その中の鑑賞用の一冊を手に取って、ぱらりとページを捲る。巻頭にはタイガのグラビアとインタビュー記事が載っていた。
「どれどれ？」
　このインタビューを受けた後、タイガに「今日のインタビューはどうだった？」と聞いたら、あんまり答えたくなさそうにしていた。何か聞かれたくないことでも聞かれたのか、それとも俺には話したくないのか、と思ったけど、「絶対読めよ。それまではなんも言わねぇから」と言われてしまい、それ以上何も教えてくれなかった。
　インタビューをお最初から目を通していく。当たり障りのない質問や、今度の大会に向けての意気込み等にタイガは丁寧にしっかり答えていた。だから、あの時なんで教えてくれなかったのかわからない。
「ん～？」
　首を捻り、さらに読み進めて暫く後、俺はびっくりして椅子から転げ落ちそうになった。
「な、なな、なにこれっ！」
　タイガが、俺のこと……っ！
　目を擦り、もう一度記事の内容に目を向けた時、着信音が鳴った。画面には「タイガ」の文字。
「ちょっとタイガ！　どういうこと！？」
　電話に出るや否やそう言うと、タイガの笑い声が聞こえてきた。「見たか？」と。
「『見たか？』じゃないよ！　ちょっと、アレ、なに！？」
『なに、って、聞かれたこと答えただけだけど？』
「あああ、あんなこと答えたら、おれっちとタイガきゅんがお付き合いしてるってバレちゃうじゃん！」
『別にいいだろ』
「良くない！」
　俺とタイガは付き合ってる。でもそれは、セプテントリオンの面々と山田さん、聖さん、ジュネさんと、ごく一部の人間しか知らない。オバレの皆さんにだって内緒にしている。それなのに、タイガはインタビューで交際を匂わせるような発言をしていた。
「ていうか、聖さんに相談もなくこんなこと答えちゃダメでしょ！」
『いや、その場に聖さんいたけど、止めなかったし……』
「え！」
　これはダメでしょう、聖さん……！　正直、経営面やマネジメント面では些か頼りないと思ってはいたけど……！
「えぇ、これ、大丈夫かなぁ？」
『平気だろ』
　タイガはケロッと答えている。が、妙な予感がしてＳＮＳでエゴサをしたら……。
「あ、あぁぁぁ……」
『どーした？』
「……タイガきゅん、ＳＮＳを見てごらん……」
　溜息交じりに言って十数秒後、電話の向こうでタイガがクスクス笑っているのが聞こえてきた。笑い事じゃない！
『あー、なんか、バレてるっぽいな！』
　楽しそうなタイガ。
「ねぇ、もしかしてとは思うけど……わざと？」
『ん？　さぁな』
「え、えー……」
　わ、わざとだ……！
『まぁ、いいんじゃねぇの？　なんか変な事言われそうになったら、会見して行ってやるよ。『カズオ……カケルは俺のもんだ』ってよ』
「それが目的だな……」
　俺は頭を抱えて雑誌を閉じた。でも、そろそろ公表してもいいとは俺も思ってはいた。思ってはいたんだけど……、会見で俺の方からカッコよく交際宣言したかったのに！
　俺の「タイガきゅんとのお付き合い報告計画」はガラガラと音を立てて崩れていった。

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