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    どうしようもないものを投下

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    886日目
    タイカケ。
    皆が起きる前には帰って来られるのか?
    わけわからん話しですが、私が海鮮丼食べたいだけです。

    「みんなにはナイショだよ……」
     真夜中、もう明け方に近いくらいの時間に目が覚めた。喉が渇いていたので水を飲もうと外に出たところで、カズオに出くわした。一瞬驚いた顔をしたカズオは、俺の姿を見て妖しく笑って言った。
    「な、何がだよ?」
     俺が尋ねてもカズオは答えず、俺の手を取った。そのまま俺の手を引いて、階段を下りる。そのままぐいぐい俺の手を引いて、寮の外に出る。ふわりと吹く風は生暖かく、この時期特有の湿った香を含んでいる。
    「なぁ、なんなんだよ」
    「しー、もうすぐ来るから」
    「はぁ? 何が?」
     俺がそう聞くと、遠くの方からエンジン音が近づいてきた。薄暗い道路の向こうから、遠目のライトが近づいてくる。眩しい。その車は俺たちのたたずむ寮の前に停車した。自動でドアがひらいた。
    「さ、どうぞ、タイガきゅん」
    「え? なに?」
    「こんばんは。寮の子に見つかっちゃったから、この子も一緒でいいかな?」
     カズオはいつもと違い落ち着いた様子で運転手に声を掛けた。運転手は「勿論でございます」と返す。俺は戸惑いながらも車に乗り込んだ。前に一度、乗ったことがある車のような気がする。埠頭までカズオに迎えに来てもらったときだ。
    「なぁ、こんな夜中にどこ行くんだよ?」
    「えへへ~、どこだと思う?」
     カズオはシートベルトを閉めながら、鼻歌交じりで尋ねる。知るかよ、そんなの。俺もシートベルトを締めると、車はスムーズに動き出した。
    「これから、漁港に向かうんだよ」
    「……は?」
    「朝一のとれたてぴちぴち海鮮丼が食べたくなっちゃって!」
    「はぁぁ?」
     コイツは時々、本当に突拍子もないことをする。こんなことに付き合わされる運転手さんも大変だと思いながらルームミラーを見ると、運転手もカズオに負けないくらいに機嫌よさそうな表情をしていた。なるほど。コイツの運転手、ってわけか。俺はあくびをひとつする。
    「着くまで寝てていいよ?」
    「んー」
     カズオに言われて俺は目を閉じる。朝日に起こされる頃には海が見えるのだろうか? さっきまでは喉の渇きが気になっていたのに、今は急に空き始めた腹が気になる。けど、心地よい座席は、俺をすぐに夢の世界へと誘った。
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    オルト

    TRAININGタイカケ。
    付き合っていくうちに、カケルくんに対してだけ策士になっていくのもいいな。
    このところ、結構冷え込む。青森に比べたら全然だけど、それなりに東京も寒くなるんだな、なんて思いながら窓から冬の空を見上げた。今にも降り出しそうだ。この気温だと、みぞれか……雪になってもおかしくない。
    「さみぃよなぁ」
     今朝、寒い寒いと言いながら出て行ったカズオのことを思い出す。寒いのならもっと厚着をしていけばいいのに、と思うけど、ファッションがどうのこうの言って寒そうな薄っぺらいコートで出て行った。そう言えば、傘、ちゃんと持っていったのか? まぁ、アイツのことだから準備してるだろうし、持ってなくても車移動出し大丈夫か……。でも……。
     俺はカズオに一言連絡を入れる。
    ―今日、帰りは?
     仕事中だろうから返事はすぐに来ないだろうと思っていたけど、案外すぐに来た。
    ―今日は久しぶりに電車で帰るよん! 雨降りそうだから急がなきゃ~
     めずらしい。この言いぶりだと、傘も持ってなさそうだ。
    ―何時ころ駅着く?
    ―あと十五分くらいかな。
    「よっし」
     俺は上着を羽織り、全然使ったことのないマフラーを掴んで玄関に向かった。自分の傘とカズオの傘を掴んで外に出ると、ぴゅうと冷たい風が頬を刺した。
    「寒 1064

    オルト

    TRAINING154日目 1352文字
    付き合ってないタイカケのデート
    今日は天気もいいし、比較的暖かい。気持ちがいいな、と思い窓を開けて外を見るとちょうどタイガきゅんが玄関から出て来た。
    「あ、タイガきゅーん! どこ行くの~?」
     呼び止めるように声を掛けると、タイガきゅんはピタリと足を止めた。くるりと振り返ったタイガきゅんは、どこか嬉しそう。何かいいことでもあったのかな?
    「天気いいし、散歩。おめぇも行くか?」
    「え! いいの!?」
    「ダメなら聞かねぇよ。どーすんの?」
    「行く!」
     まさかタイガきゅんから誘ってくれるなんて、思わなかった。スマホとお財布だけを手にし、部屋を飛び出した。外に出ると、タイガきゅんは穏やかな笑顔で立っていた。あんな顔するんだ。
    「よし、行くぞ」
    「うん!」
     俺たちは並んで、温かな陽気の中歩き出した。

     公園に着くと、子供たちをはじめ、老夫婦や若い恋人までいろんな人でにぎわっていた。移動販売の車では、スイーツや軽食を販売していて、俺たちも軽食を手にベンチに腰かけた。
    「ん、おいしい!」
    「こっちも美味い」
     俺はソフトクリーム、タイガはフランクフルトを買った。甘いものを食べてると、しょっぱいものも食べたくなるんだよね。俺も 1422