夜中に台所でぼくはきみに謝りたいと酔っぱらうしかなかった ワインオープナーを買った日は覚えていないが、それが無かった日のことはよく覚えている。さっきこの部屋を出ていった男の誕生日だ。タイガはシンクの元で胡座をかくと、調味料などが入った棚を開けた。醤油やソースをかき分けた奥にワインがある。赤。タイガはその名前を知らない。味も、生産地も。ただ、埃っぽくなった深緑のボトルを取り出す。買ってきた日は白もあったが、それは今カケルの家にある。
あいつが合い鍵を置いていったのはわざとだろうけど、コートはうっかりに違いない。今夜の気温は冬に逆戻りしたように寒くなりそうです! なんて天気予報士は言っていたのに。あんな奴――タイガは唸りながらオープナーを取り出した。
「どっかで凍え死んでろ」
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