「わ、懐かしい~!」
部屋の掃除をしていると、カケルが楽しそうに声を上げた。
「ねぇ見て!」
カケルが手にしていたのは、懐かしい写真。あの頃はまだフィルムのカメラも多かったっけ。写真の中の俺とカケルは今よりずっと若い。というか、幼ささえ感じる。
「高校……一年生の時だよね?」
「そうだな」
カケルに身を寄せるようにして、その写真を覗き込む。文化祭の時の写真だ。この時はまだ、具体的に芸人になろうなんて考えてなかった。でも、人を楽しませたり笑わせるのは、好きだった。だから、後夜祭の時にカケルとふざけてテラテラの衣装にでっかい蝶ネクタイを付けて、カケルにはおまけでアフロのヅラを被せた。みんな俺たちのコテコテの姿に笑ってくれた。
「まさか、十年後にホントにこんな格好してるとは思わなかったよ」
「そうだな」
顔を上げ、棚に飾られている「焼きそばパン」の写真を眺める。いつかのステージの後に、何となくノリで撮ったけど、カケルがあまりにも綺麗に笑ってるから、いつでも見られるようにプリントして百均で買ってきた写真立てに入れた。
「タイガくん、あの写真気に行ってるよね」
「おう」
「なんでもない時の写真なのに、どうして?」
カケルが不思議そうに首を傾げる。ホントの理由なんて、恥ずかしくて言えない。
「まぁ、いいだろ。このスタイルになってから結構初期のだし、初心をわすれないように、ってな」
「なるほどぉ……」
フンフンと頷くカケル。ホントの理由を知ったら、どんな風に思うだろう?
「こういう写真さ、これからも増やしていきたいよね」
「そうだな」
「それで、いっぱい部屋に飾るの! それぞれの部屋に! そしたらそれぞれの部屋に帰っても、いつも一緒に居るみたいじゃない?」
これだけ一緒に居るのに、カケルもまだ一緒に居るのを望んでくれているのか。うん。本当に望んでくれているのなら、そろそろ良いかも知れない。
「なぁ、カケル」
「なぁに?」
「写真で一緒に居るみたいに感じるんじゃなくてさ、マジで、一緒に暮らさないか?」
「へっ!?」
カケルは驚いた顔で顔を赤くした。指先をモジモジさせ、視線を逸らして、口をもごもごさせる。返事は聞こえてこないが、こんな態度を見れば、わかるんだよな。
俺は小さくガッツポーズをした。