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    927文字
    パンそばのタイカケ
    付き合ってません!

    「わ、懐かしい~!」
     部屋の掃除をしていると、カケルが楽しそうに声を上げた。
    「ねぇ見て!」
     カケルが手にしていたのは、懐かしい写真。あの頃はまだフィルムのカメラも多かったっけ。写真の中の俺とカケルは今よりずっと若い。というか、幼ささえ感じる。
    「高校……一年生の時だよね?」
    「そうだな」
     カケルに身を寄せるようにして、その写真を覗き込む。文化祭の時の写真だ。この時はまだ、具体的に芸人になろうなんて考えてなかった。でも、人を楽しませたり笑わせるのは、好きだった。だから、後夜祭の時にカケルとふざけてテラテラの衣装にでっかい蝶ネクタイを付けて、カケルにはおまけでアフロのヅラを被せた。みんな俺たちのコテコテの姿に笑ってくれた。
    「まさか、十年後にホントにこんな格好してるとは思わなかったよ」
    「そうだな」
     顔を上げ、棚に飾られている「焼きそばパン」の写真を眺める。いつかのステージの後に、何となくノリで撮ったけど、カケルがあまりにも綺麗に笑ってるから、いつでも見られるようにプリントして百均で買ってきた写真立てに入れた。
    「タイガくん、あの写真気に行ってるよね」
    「おう」
    「なんでもない時の写真なのに、どうして?」
     カケルが不思議そうに首を傾げる。ホントの理由なんて、恥ずかしくて言えない。
    「まぁ、いいだろ。このスタイルになってから結構初期のだし、初心をわすれないように、ってな」
    「なるほどぉ……」
     フンフンと頷くカケル。ホントの理由を知ったら、どんな風に思うだろう?
    「こういう写真さ、これからも増やしていきたいよね」
    「そうだな」
    「それで、いっぱい部屋に飾るの! それぞれの部屋に! そしたらそれぞれの部屋に帰っても、いつも一緒に居るみたいじゃない?」
     これだけ一緒に居るのに、カケルもまだ一緒に居るのを望んでくれているのか。うん。本当に望んでくれているのなら、そろそろ良いかも知れない。
    「なぁ、カケル」
    「なぁに?」
    「写真で一緒に居るみたいに感じるんじゃなくてさ、マジで、一緒に暮らさないか?」
    「へっ!?」
     カケルは驚いた顔で顔を赤くした。指先をモジモジさせ、視線を逸らして、口をもごもごさせる。返事は聞こえてこないが、こんな態度を見れば、わかるんだよな。
     俺は小さくガッツポーズをした。
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    オルト

    TRAININGタイカケ。
    付き合っていくうちに、カケルくんに対してだけ策士になっていくのもいいな。
    このところ、結構冷え込む。青森に比べたら全然だけど、それなりに東京も寒くなるんだな、なんて思いながら窓から冬の空を見上げた。今にも降り出しそうだ。この気温だと、みぞれか……雪になってもおかしくない。
    「さみぃよなぁ」
     今朝、寒い寒いと言いながら出て行ったカズオのことを思い出す。寒いのならもっと厚着をしていけばいいのに、と思うけど、ファッションがどうのこうの言って寒そうな薄っぺらいコートで出て行った。そう言えば、傘、ちゃんと持っていったのか? まぁ、アイツのことだから準備してるだろうし、持ってなくても車移動出し大丈夫か……。でも……。
     俺はカズオに一言連絡を入れる。
    ―今日、帰りは?
     仕事中だろうから返事はすぐに来ないだろうと思っていたけど、案外すぐに来た。
    ―今日は久しぶりに電車で帰るよん! 雨降りそうだから急がなきゃ~
     めずらしい。この言いぶりだと、傘も持ってなさそうだ。
    ―何時ころ駅着く?
    ―あと十五分くらいかな。
    「よっし」
     俺は上着を羽織り、全然使ったことのないマフラーを掴んで玄関に向かった。自分の傘とカズオの傘を掴んで外に出ると、ぴゅうと冷たい風が頬を刺した。
    「寒 1064