「ねぇね、パンくん」
ふわふわした笑顔でカケルが俺を呼んだ。周りにいる奴らの顔がへのへのもへじに見えるくらい、カケル・焼きそばの笑顔は輝いていた。
「どーした?」
「今日のステージが終わったらね、行きたいところがあるの」
出番まであと三組。劇場の狭い舞台裏でカケルは俺に耳打ちをした。今このタイミングでわざわざ言うなんて、カケルはどこに行きたいというのだろう。
「いいけど、どこ……?」
「え、と……」
カケルはポッと頬を染めた。え? なんだよ……?
まさか、ホテル、とか……? そう言えば最近シて無かったもんなぁ。前にヤってる時に隣の部屋から壁ドンされたっけ……。
「それは、終わってから教えるね! さぁて、お仕事スイッチ入れなきゃ!」
カケルはさっきまでの照れた表情から、焼きそばの顔に切り替わった。正直俺は気が木じゃなかったけど、ステージに上がるんだからしっかりしないといけない。
「よっし、行くぞ、焼きそば!」
「オッケー! パンくん!」
前の組が履けてステージが暗転する。テーマ曲がかかり始めたら俺たちの出番だ。行先はどこかわからないけど、このステージを成功させたご褒美だと思って、今はステージに集中しよう。
ステージの後、俺が連れていかれたのは、カケルのハマっている女児アニメのコラボカフェだった。飲み物を十杯飲まされて腹がやばかったが、コースターを並べて幸せそうな笑顔を浮かべるカケルが見られたから、まぁ、いいか。