「あっつー……」
カケルが身体を起こしてベッドサイドに置いていた杖に手を伸ばした。すいっと一振りすれば、魔法で部屋がひんやりとした。
「ふぅ」
一息ついているカケルの身体には、ところどころに俺が虎になってしまったために毛があちこちについていた。ふぅ、と息を吹きかけて飛ばそうとしたけど、汗のせいで張り付いて剥がれない。舐めとろうと思って、カケルの背中をベロベロ舐めた。カケルは「くすぐったいよ~」と笑った。数回舐めたら毛は殆ど取れた。取り残しがないかよく見ると、あちこちに引っ搔いたような傷がある。俺の爪と牙のせいだ……。冷静になった途端、興奮が収まって俺は人間の姿に戻った。
「カケルぅ……」
これ以上傷つけないように、俺はそっとカケルに腕を回した。ぎゅうって抱きしめたいけど、また傷つけるのが怖くて力を入れられない。
「どーしたの、タイガきゅん」
カケルは優しく俺の頭を撫でてくれる。いつも俺に優しくて、甘やかしてくれるカケル。大好き。だけど、俺は……。
「ごめん、また、傷つけた」
「あー、いいよ、このくらい平気平気! 治癒魔法で治るレベルだし! それに、」
「……?」
「なんかさ、タイガきゅんとシたな~って感じるから、なんかイイかも」
照れた様子で笑うカケル。そんなこと言われたら、俺、俺……っ!
「あらら! タイガきゅ~ん、またお耳出ちゃってるよん?」
カケルは楽しそうに笑って、俺の耳を優しく揉む。だめだ、だめだカケル。そんなことされたら……。
「フーッ、フーッ」
「……もう一回、する?」
「……する」
やっぱりカケルは、優しい。大好き。今度は俺も、優しくする。