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    760文字
    22世紀蕎麦屋タイカケ

    「んっ、んっ……!」
    「わ、タイガくん、何してるの?」
     いつものようにお蕎麦屋さんでお蕎麦を食べていたら、女将さんに「タイガが寄っていけと言ってるから」と自宅スペースに招き入れられた。タイガくんといつも遊んでいる居間に向かうと、そこではタイガくんが腕立て伏せをしていた。
    「カケル……!」
     しんどそうな表情をしていたタイガくんは、僕に気付くとパッを笑顔になった。腕立て伏せをする手を止め、身体を起こすと僕に駆け寄ってきた。
    「わ!」
    「カケル、俺、筋肉ついたかな?!」
     顔の目の前にずいっと腕を出された。タイガくんの腕は、まだまだ子供の腕だ。筋肉がついているどころか、なんだか柔らかくて、美味しそう……。
    「どうして急に?」
     返事を誤魔化すように、タイガくんに聞き返す。
    「昨日テレビで見たんだ! コイビトの事カッコ良く守るヒーロー!」
    「ふんふん」
     なるほど。ヒーローに憧れてるんだ。可愛いなぁ。まぁ、僕もタイガくんみたいにヒーローに憧れていた頃があるから、よくわかるなぁ。
    「だから俺、鍛えてカケルの事守れるくらい強くなるんだ!」
    「へ?」
     僕を、守る?
    「なんで、僕を?」
    「だって、将来カケルは俺の恋人になるだろ? だから、俺が守ってやんねぇと!」
     イキイキした表情で答えるタイガくん。当たり前のように、僕が将来タイガくんの恋人になることになってるんだけど……どういうこと?
    「あの、タイガくん、恋人って……」
    「カケル! 今度はフッキンするから、足抑えてくれ!」
     タイガくんは言うやいなや、ごろん床に転がって膝を立てた。
    「ほら、早く!」
    「え、あ、うん!」
     タイガくんに言われるがまま、僕はしゃがんでタイガくんの足を抑えた。こんなことも割れるがままだから、きっと「俺の恋人になれ!」なんて言われたら、今みたいにあっさり「うん!」って答えてしまいそうな自分が怖い。
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    TRAINING成人タイカケ。
    おじさん組と無自覚両片想い。
    「それでさぁ~、タイガきゅんがさぁ」
     顔を真っ赤にしたカケルが、日本酒をちびちび飲みながら声を上げる。
    「うんうん、それで?」
    「こんどね、おれっちの出張の前に、どこか遊びに行こ~って、いってくれたのぉ!」
     締まりのない顔で言うカケルに、ミナトが「良かったなぁ」と声を掛けると、カケルは「いいでしょ~」と言って笑った。その隙に、ユキノジョウはカケルの手元から徳利を遠ざけ、自分の手元のものと入れ替えた。
    「だからねぇ、おれっちもう楽しみで楽しみで……」
     カケルはそのまま徳利からおちょこに中身を注ぎ、またちびちび飲み始めた。カケルは気付いていない。徳利が入れ替わったことも、その中身が水であることも。今日はいつもに比べて格段に飲むペースが速く、先程からユキノジョウもミナトもカケルの様子に気を配っている。だいぶ酔っているようで、タイガに遊びに行こうと誘われた話を何度もしている。話を聞かされている二人は、その度に初めて聞いたように反応していた。
    「これ、デートって思ってももいいのかにゃぁ?」
    「あぁ、デートだろう」
    「そうそう、香賀美は照れ屋だから、そう言わないだろうけどね」
    「えへへえぇ。 1563