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    828文字
    スチパンのタイカケ
    もう前のこと過ぎてスチパンって何?って方も多いかもですが、私はたぶん永遠に言ってる

     整備を終えたカケルは、診察台に座ったまま降りようとしない。シャツを着ることもなく、下着一枚の状態で自分の左手、機械の手をじっと見つめていた。カケルが動く様子がないことに気付いたタイガが、振り返ってカケルに声を掛ける。
    「カケル、どうかしたのか?」
    「……うん、えっと」
    「どっか調子悪いか? なんか、ミスったか?」
     タイガは片付けていた工具を再び広げ、心配そうな表情を浮かべた。
    「あ、違う、タイガの整備は完璧だよ」
    「……そうか?」
    「あの、えっと……」
    「どうした? なんかあるんならちゃんと言え」
     タイガは手袋を外し、カケルの頭を撫でながら言った。掌から伝わってくる温もりが、カケルの心を融かしていく。
    「僕の手……こっち側」
     カケルは左手をタイガの方に差し出す。タイガは何も言わずにその手を取って、両手で包んだ。温かさも、握られている感覚もない。カケルは自分の手を包んでいるタイガの手をじっと見る。
    「たとえ手足が機械だって、関係ない。カケルはカケルだ」
     カケルが言おうとしていることを察知して、タイガはカケルが口を開く前に言った。
    「はは……普段は鈍いのに、なんでこういうことだけ鋭いかなぁ」
     カケルは眉を下げ、目を潤ませる。
    「僕、この先もずっとタイガのお世話になっちゃうかもよ? いいの?」
    「いい。ていうか、俺がおめぇの整備をしたいんだよ。それに、整備以外のことは全部俺の方が世話になってるし」
    「……」
     タイガの言葉にカケルは目を瞬かせてから、クスリと笑った。
    「ふふっ、確かにそうかもね! お勉強とか、お掃除とか」
    「おう。バランス取れてるし、良いんだよ。それに、俺がおめぇの身体の事で今更ああだこうだ言う奴に見えるか?」
    「……見えない!」
     カケルは、タイガの胸にこてんと額を当てた。
    「たとえ右手と右脚が機械になっても、内臓が機械になっても、おめぇがおめぇなら好きだ」
    「……ありがと。僕も、大好き」
     カケルがタイガの背中に両手を回して抱きしめた。
     タイガは、確かに両方の手から温もりを感じた。
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    TRAINING成人タイカケ。
    おじさん組と無自覚両片想い。
    「それでさぁ~、タイガきゅんがさぁ」
     顔を真っ赤にしたカケルが、日本酒をちびちび飲みながら声を上げる。
    「うんうん、それで?」
    「こんどね、おれっちの出張の前に、どこか遊びに行こ~って、いってくれたのぉ!」
     締まりのない顔で言うカケルに、ミナトが「良かったなぁ」と声を掛けると、カケルは「いいでしょ~」と言って笑った。その隙に、ユキノジョウはカケルの手元から徳利を遠ざけ、自分の手元のものと入れ替えた。
    「だからねぇ、おれっちもう楽しみで楽しみで……」
     カケルはそのまま徳利からおちょこに中身を注ぎ、またちびちび飲み始めた。カケルは気付いていない。徳利が入れ替わったことも、その中身が水であることも。今日はいつもに比べて格段に飲むペースが速く、先程からユキノジョウもミナトもカケルの様子に気を配っている。だいぶ酔っているようで、タイガに遊びに行こうと誘われた話を何度もしている。話を聞かされている二人は、その度に初めて聞いたように反応していた。
    「これ、デートって思ってももいいのかにゃぁ?」
    「あぁ、デートだろう」
    「そうそう、香賀美は照れ屋だから、そう言わないだろうけどね」
    「えへへえぇ。 1563