狼は愛の夢を見るか 運命の赤い糸というのは、言わば呪いだ。
幼い頃教えられた伝承は、「運命の人とずっと一緒に居られる」なんて可愛らしい御伽噺だった。でも成長するにつれ、マナマナの血を絶やさないよう子孫繁栄の為に作られた厄介な掟であることが、ありありと分かる。
ひとつ、一定の年齢に達したマナマナは、赤い糸を結ぶ相手を選べる。合意が得られて始めて、成立となる。
ひとつ、赤い糸を結んだ相手は一生添い遂げるパートナーとなり、他者へ好意が移らない。
ひとつ、赤い糸を一度結んでしまうと原則解消することが出来ない。解消する場合、相応の代償を負う。
ひとつ、適齢期を迎えても尚誰とも結べていないマナマナは、寿命が減っていく。
――これが呪いと言わずして、何と言うのか。プリマジが盛んになった影響か、恋愛よりもプリマジを見ている方がいい、なんてマナマナも出始めた昨今には到底合わない風習だ。それでも、この呪いが消えてなくなるわけじゃなかった。
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