まるで万華鏡「……ちょっと、人のものを勝手に触らないでくれる?」
背後から声がして、慌てて手に持ったそれをテーブルの上に置き直した。蒼月がシャワーを浴びている間にふと沸いた興味でこっそり眼鏡を眺めていたが、想像よりあっという間に出てきてしまった。
蒼月は綺麗好きな割に、澄野よりも入浴時間は短い。だが肌が白いせいか、タオルが巻かれた首も眼鏡の乗っていない頬もまだ赤らんでいた。
「眼鏡、かなり度がキツくないか? 裸眼でシャワー浴びに行ったから、こんなに悪いなんて思わなかったぞ」
「まあ、別に視力はいいからね」
「……ん?」
「目が悪いから眼鏡をしてるわけじゃないってこと」
何度聞いても、理解が出来ない。目が悪いから眼鏡をするものじゃないのか? 度が入っているから伊達眼鏡というわけでもないだろう。
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