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    omisosukiiii

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    omisosukiiii

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    完売した本に収録していたSSです。

    お互いさま ここは準備室の奥。
     蛍光灯のシェードから揺らめいて光る灯りをぼうっと眺めている。
     ジリジリと音が聞こえてくるほどに静まりかえった部屋の片隅にある簡素なベッドは、バラムが度々訪ねて来るカルエゴのために用意したものだ。
     白く薄いシーツが広げてあり、彼好みの清潔に整えられたベッドの上で、カルエゴとバラムの二人は静かに抱き合っていた。
     抱き合っているとは言っても、ただ腕を回し合っているだけのフランクなハグなのだが。問題は体勢である。正直言って、心が落ち着かない。
    「……カルエゴくん。僕、重くない? 大丈夫?」
     念の為彼に確認してみるが、これには立派な訳があるのだ。
    「問題ない」
    (そうは言ってもねえ)
     今の二人の体勢。それは、自分よりも一回り小柄なカルエゴが、自分を膝と膝の間に割り込んでお互い正面を向いて密着し、彼の上に自分が乗っているからである。
    (僕、きっと重たいだろうに……カルエゴくんに訊ねてみても、問題ない! の一点張りだしなあ)
     ただでさえ自分はカルエゴより巨体なのだ。いくら口では問題ないとは言っても、できるだけ彼に負担をかけないようにしたくて。
     カルエゴに内緒でフラクタルを自分にかけてはいるけれど、体重自体軽くなっても彼の上に乗っかっている体勢のため、どうしても自重で多少の重みはカルエゴにのしかかるはずだ。
     しかし、そんな小細工はすぐに見破られたようで、不機嫌を隠さず眉間に皺を寄せてカルエゴが解除するよう求めてくる。
    「で、でもさ。僕とカルエゴくんの体格差を考えたら……」
    「俺を誰だと思っている。そんなもの、造作ないことだ」
     言うや口角を上げて不敵な笑みを見せるカルエゴに、相変わらずだなぁとバラムは思わず目を細めて口元が緩む。
     そこを見逃さなかったカルエゴは、「今度こそ解除しろ」と催促を強めて来たので、バラムの方が折れてフラクタルを解除した。
     自分の浮遊力が無くなることを感じたが、その分、自分を抱き止めるカルエゴの腕に力が入るのが分かり、なんだか嬉しく感じてしまう。
    「お前の重さなど、小鳥のように軽いわ」
     まるで悪役や敵のラズボスのように鼻で笑うような仕草を見せて入るが、目元は緩み穏やかに笑っている。
     その姿はバラムにとってはまるで物語に出てくる王子様のように見えて、少しだけ顔が熱くなることが自分でもわかった。
     そんな自分に気づかれたくなくて、誤魔化すように彼の背中に腕を回す。
     お互いハグをしていて、背中に腕を回していたカルエゴが「やっぱり届かないな」呟いて、その分抱き締める力を強めてくる。
     本当はそんな彼に応えたくて自分も抱きしめ返したいけれど……、なんせ体格差と力加減が気になるのである。
     自分より一回りも小さくて細い彼を気遣い、出来るだけ力を入れ過ぎないよう慎重に調整しつつ加減して壊れ物を扱うように触れていたら「もっと力を入れろ」とぼやきながら、目の前の紫玉が揺れて真っ直ぐ見つめてきた。
    「俺をみくびるなよ。お前と同じ【8《ケト》】なんだから、これくらいでどうにかなるほどヤワではないくらい、わかっているだろう」
     そう言って、回していた腕の力をより一層強めて来て「お前にもやってほしい」だなんで言って来て。その声がいつもより甘く聞こえてきて、思わず喉を鳴らしてしまう。
     それに気づいたのか、顔を上げて見つめてくるカルエゴは「お前は存外わかりやすい」と笑って来たので、僕は耳まで赤くなる。
    「もう。どうなっても知らないんだからね」
    「とか言いながら、お前はこっそり力を加減するんだろう」
    「当たり前でしょ。ちゃんとわかってるじゃない。僕はカルエゴくんを傷つけたくない」
    「フッ、そうか」
     最後に微笑んだカルエゴを見て少しだけ気になったバラムだったが、カルエゴから「ちゃんとわかってるさ、お前のことは。いつも見ているからな」と言われそのままマスク越しに口づけられて、つい気が動転して腕の力加減を忘れてしまう。
    「うぐっ!」
    「あ! ご、ごめん! カルエゴくん、大丈夫? 本当にごめんね! どこが痛い?」
    「だ、大丈夫だ。問題ない」
     ゴホゴホと咳き込むカルエゴを見て、バラムは思わず笑ってしまう。
     お前が抱きしめ返してくれて嬉しいと言ってくれた、一途で優しい彼を見て、本当に彼を好きになってよかった。
     心からそう思える相手に出会えてよかったと一人胸の奥で幸せを噛み締めるのであった。

    終わり
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