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    omisosukiiii

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    omisosukiiii

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    イチさんの素敵イラストの続きを許可を得て書かせていただきました。ジョジョミリしらなので、展開がこれでいいのかは不明です!楽しんでもらえたら嬉しし〜〜〜〜!

    イチさんのお話の続き「シチロウ?」
     ひと目で彼だと分かった。彼以外には考えられなかった。
     会いたくて、会いたくて、会いたくてたまらなかったシチロウが、海を超えたこの地に居るなんて。
     そんな都合のいい光景が目の前に広がっていても、藁をも掴む思いで彼の手を掴む。
    「お前、シチロウだろう?」
     もう一度彼の名を呼ぶ。この間にも彼から逃げられそうで、腕に入る力を強めてしまう。
     彼は観念したのか、怯えるような、震えた声で「カルエゴくん……?」と答えた。
    「ずいぶん探した!」
     勢いに任せて彼の腕を強く抱きしめ、手に力が入ってしまう。
     シチロウの顔を見てみるとどこか困惑しているようだが、このような場所で再会できてことに混乱しているのかもしれない。俺もそうだからだ。
    「すまない。ずっと一人にして……今まで何をしていたんだ?」
    「あっ、あの」
     シチロウの腕を強く握り締めたまま、彼の方を見上げてみるとマスク越しでも困惑しているのが分かった。先ほどよりも、かなり動揺の顔を浮かべている。
    「お前が入れた茶を飲みたいとずっと思っていた。また昔の……」
     ように、と言葉を続けようとした時、「おとぉさん」と大きな声が聞こえてくる。
     その声が小さな子どものものだった。そして、こちらに駆け寄って来た。
    「お。お父さん?だと」
     思わすカルエゴはよろけてしまう。
     先ほどとは打って変わり、晴天の霹靂である。状況が飲み込めない。これは一体どういうことだ? 眉間に皺を寄せて、ついシチロウを詰め寄る形になってしまった。
    「えっと……うーん。何から話せばいいのか……」
     否定しない⁉︎ ということは、本当にこの子どもがシチロウの子どもで、俺のシチロウが離れている間に作った子だと⁉︎ 俺の事が好きなんじゃなかったのか? あれは嘘だったということか、シチロウ。
    「もういい。状況は理解した」
     こちらは何年も探し続けて、シチロウを思い続けていたのに、彼は俺のことなどどうでも良かったのだ。
     こんな幼女までこしらえて。
     その幼女はシチロウの足元に隠れてこちらをチラチラ見て様子を伺っているように見えてた。
    「おとぅたん、このちと、だあれ?」
     足元から離れない舌ったらずな幼女の顔を見てみれば、髪の色は月光の夜に光る美しい銀で、これはシチロウの遺伝を受け継いだのだろう。
     しかし、瞳の色はシチロウのものとは違う、漆黒に紫が混じる黒曜石の色だった。これはきっとまだ見ぬ母親の遺伝だろう。
     幼女の歳を推定すると、2、3歳と言ったところか。
     つまり、出会ったのは俺の前からいきなり姿を消した直後というわけだ。
    「ははは! そうか、俺の今までは一体何だったんだろうな」
    「カルエゴくん、あのね」
    「お前、結婚したんだな。おめでとう、とでも言っておくべきか?」
     言い訳なんて聞きたくなくて、シチロウが話そうとしていた上から言葉を被してしまった。この程度の意地悪くらい、今の俺なら許されるだろう。
     なんせ、付き合っていた時から不貞をされていたことになるのだから。その上で相手に赤子ができたから俺の元から逃げた、と言ったところだろうか。
    「俺はお前の前には金輪際現れない。邪魔はしない。お前とお前の家族の幸せを願っている。じゃあな」
     俺がいながら結婚したのか、とは言えなかった。だから、自分ができる最大級の祝いの言葉だ。
     踵を返してその場から立ち去ろうとした時、腕を後ろから強く掴まれる。
    「もう! カルエゴくんってば! 僕の話を最後まで聞いてほしいな。君って昔からちっとも変わってないんだから」
     掴まれた腕を振り解いて、「じゃあ一体俺はどうすれば良かったんだ!」と年甲斐にもなく喚いてしまった。ずっと好きだった、愛していた相手が別の女と結婚して子供までこしらえて。今すぐこの場を立ち去らないと気が狂いそうになる。
    「カルエゴくん。話を聞いて。ねえ、いなくなるのはそれからでもいいんじゃない?」
    「……」
    「カルエゴくん、泣いてるから僕はこのまま君を一人にしたくないよ」
     そう指摘されて初めて自分の頬を伝うものに気づく。涙を流していたなんて滑稽だ。俺はこんなにも弱かったのかと自虐的に笑った。だめだ。
     俺はきっとシチロウが俺の元からいなくなったら生きていけないだろう。
     いや、生きてはいけるだろうが、他には目もくれることはないし、自分の凶暴性を抑えきれそうにない。
     今までは、シチロウに会いたい一心で探し回っていたからだ。その間、自分は幾らか真っ当な暮らしはしていた。
     シチロウが帰ってきたら、今度こそ凡庸な人生を共に歩もうと考えていたからだ。でも、今夜その願いは砕け散った。
    「カルエゴくん」
    「……なんだ」
    「待たせちゃってごめんね」
     意味がわからないと言いたかったが、シチロウからぎゅうぎゅうと抱きしめられて話ができない。あまりにも強く抱きしめられているため、息もままならないでいる。
     だが、これで抱擁も最後だと思えば、この時間が止まればいいのにと思うほど甘く切ない気持ちが込み上げてくる。
     (せめて、この温もりは覚えていたい)
     存分に彼の体温と息づかい、腕の強さと温もりを体と脳に刻んで離れようとした時、「こんなに早く再会する予定じゃなかったんだ」と困ったような声が上から聞こえていた。
     ふと上を向いてみると、シチロウの瞳から溢れんばかりの涙が流れている。一瞬驚いたが、口元を見てみれば微笑んでいる。
    「実はね、この女の子は僕とカルエゴくんの子どもなんだよ」
    「は!?」
    「ふふ、驚いた? 本当はもっとこの子が大きくなってから、君に会いに行こうと思っていたんだよね、でもこの国でばったり再会するなんて。やっぱり僕たち、離れられない何かで結ばれているのかな」
     そう言って、涙を流しながら思いっきり微笑んんでくるシチロウが、本当に眩しくて視界に入らなくなる。
    「カルエゴくんてば、泣きすぎ。そんなに泣くと何も見えなくなっちゃうよ」
     涙を拭いて、とハンカチを渡されて、それがぐしょぐしょになるまでカルエゴは泣いて泣いて泣き続けた。足元では「ないちてるの? たいちょぷ?」と心配した表情を浮かべて自分の小さなハンカチを渡そうとしてくる幼女がいて。
     この可愛い幼女が自分とシチロウとの子どもだと言われても、今は頭の中が混乱していて、整理できそうにない。
     いつまでの嗚咽を吐きながら泣きなまない俺に対して、シチロウはただ背中を撫でて優しくあやすようにさすってくれている。
    「今だから説明しちゃうね。あの子はね、僕の遺伝子と君の遺伝子を掛け合わせて作ったんだ。僕は子どもが産めないけど、代わりに卵は産めるじゃない? それに君の遺伝子情報を掛け合わせて保育器の中で大きくなるまで育てたんだよ。本当は僕のお腹の中で温めてみたかったんだけど、それだとリスクが大きいと判断して、初めてだったしなるべくリスクヘッジを……」
    「俺は! 俺は、お前が子どもを連れてきた時お前を諦めたんだぞ! もう俺たちは別れたんだとどれだけ気持ちがどん底まで沈んだか、お前にわかるか? どんな気持ちで、お前におめでとうと言ったのかわかるか? 俺がどんな気持ちでお前の前から消えようとしたのか……お前というやつは! それならそうと最初から言え!」
     思いの丈を大声で出し切ると、カルエゴは今度は自らシチロウの腕の中にボフンと埋まる。
    「うん、全部僕が悪い。何も言わずにいなくなってごめんね。不安にさせてごめん。今まで待たせてごめん。だから、許してくれる?」
    「っ、俺が! 今までお前を許さなかったことはないだろうが」
    「ふふ、そうだね。じゃあ、これで仲直り」
     そう言って、カルエゴの額にリップ音が鳴る。
    「帰ったら覚悟しておけよ、シチロウ」
     たくさん可愛がってやる、そう言いたかったのだが、今は愛らしい二人の子どもの
     前なので、卑猥な言葉は口にしない。代わりに、隙を見てシチロウの耳元で囁いた。
    「愛しているぞ、シチロウ」
     それを聞いたシチロウも満足そうに微笑んで、「僕も」と短く返す。
     久々に再開した二人は話が絶えないまま帰路につく。
     カルエゴは小さな家族と共に、新しい人生の旅路に出ることにした。
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